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竹谷佳孝がゴルフ伝道師に(7月9日)

今年、5人目のゴルフ伝道師は、ツアープレーヤーNO.1に輝いた男。しかも、それが自身のツアー初優勝だったから、一夜にして取り巻く環境は一変した。そんな“ジャパニーズドリーム”を、体験したばかりの男。度重なるケガに苦しみながらも、夢を諦めなかった男の物語は、子どもたちには何よりの教科書となった。

プロゴルファーたちがリレー方式で全国各地の小学校にゴルフの楽しさ、夢を持つことの大切さを伝えて歩くゴルフ伝道の旅。7月9日に宮城県の石巻市立石巻小学校を訪れたのは、竹谷佳孝(たけやよしたか)。
先月の「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」の最終日に見せた9番からの神がかり的なバーディラッシュは、たちまち子どもたちの心をとらえた。
優勝争いの模様を短くまとめたVTRはボールがカップに吸い込まれるたびに、わき起こる子どもたちの歓声とどよめきは、学校中に響き渡ったほど。

感動を素直に表現する子どもたちを前に、午後から「夢を持とう」をテーマにした講義には、自然と熱が入った。

「自分なんかでも、役に立つことがあるのなら」。自分だからこそ、子どもたちに伝えられることがあるのなら。34年の人生を、順を追って丁寧に語った。
宇部鴻城高校時代は野球部のキャプテンに就任した直後に、気を失うほどの腰の痛みに襲われて、担架で運ばれたまま、チームを離脱。しばらくは立ち上がることも出来ず、ほぼ1年を治療とリハビリに費やした。
その後、父親の勧めでゴルフに転向しても、手首を痛めたり、度重なるケガにもくじけずにゴルフを続けて来られたのは、周囲の応援を支えにコツコツと、地道に努力を続けてきたからこそとの、ひそかな自負がある。

「怪我があったからこそ、今の自分がある」と、子どもたちの前でも自信を持って言える。「我慢して、目標を掲げてひとつずつ取り組んで、あとは神様が決めること」。夢に向かって一生懸命に歩んできたものにしか言えないセリフだ。「みんなも何事も、失敗を恐れずに夢を持って取り組んで欲しい。そうすれば必ず夢は叶うから」。
つい先月に、夢を叶えたばかりの男が放つ言葉は、どれも説得力に満ちていた。

超大型台風の接近により、あいにく午前中のスナッグゴルフの実技講習会は校庭が使えなかったが、大震災から建て直されて、できたてホヤホヤの体育館には、子どもたちの笑い声が響いてそれもひとつ、復興の明るい兆しにも感じられて嬉しくなる。

実は竹谷自身もスナッグゴルフは初心者で、「みんなと一緒に学んで行く」という謙虚な姿勢も、みるみると上達していく課程を目の当たりする中で、講習会もいよいよ佳境を迎えていざ子どもたちとの直接対決では、真剣そのもの。

ハンディ2をもらってツアープレーヤーNO.1に果敢に挑んだ“そらくん”にはしかし、その必要もなかった。勢い余った竹谷のティショット。新品の体育館の壁を、行ったり来たりする間に、そらくんは1打でピンならぬ、的横3メートルにつけて2打でみごとにくっつけた。
今季NO.1プレーヤーを下した。子どもたちの興奮が最高潮に達した瞬間だ。

そんな和気藹々とした雰囲気の中にも、礼節を持ってプロゴルファーに接する子どもたち。

ここ石巻小学校は、開校140年余の歴史の中で、第3代校長が作った以下の5つの校訓が、脈々と受け継がれてきた。

① げんきよくせよ
② まじめにせよ
③ ひとりでせよ
④ よくこらえよ
⑤ しかとおぼえよ

なるほど、どおりで。子どもたちの授業態度もだからこそ、と感心しきりの竹谷の心がいっそう震えたのは講義の最後。子どもたちがプレゼントしてくれた天使の歌声。いっせいに立ち上がり、全身でリズムを取りながら歌う子どもたちの姿には、いつしか34歳の目にうっすらと涙がうかんでいた。

「この学校に呼んでいただいて、本当に感謝しています」と、竹谷。「今日は僕のほうが、凄いパワーをいただきました」と、感激しきりのオフの1日となった。