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日本オープンゴルフ選手権競技 2006

谷口拓也「誰にも引けを取らないゴルフを」

今週も、キャップのつばの裏にマジックで書き込んだ。「何苦楚魂」は、「なにくそだましい」と読む。
4年前に知り合った、プロ野球ヤクルトスワローズの岩村明憲・内野手の座右の銘。
谷口も気にいって、今ではすっかり口癖になった。

日本一を決めるこのナショナルオープンは、主催の財団法人 日本ゴルフ協会が威信をかけて、選手泣かせのセッティングを施すことで知られる。

「・・・こんなコースでこそ、そう自分に言い聞かせなくては」。
くじけそうになったときは、必ず心の中でつぶやく。
「なにくそ」と唱えると、勇気がわいてくる。

ピンチも、その精神で乗り切った。
15番パー5。
「フォロー風で、チャンスだと。思い切り振りに行ったら、すごい左へ」。
林に打ち込んだ第2打は1打で脱出できず、「こうなったら4打目勝負」と、とりあえずフェアウェーに。

残り124ヤードの4打目は、サンドウェッジで左奥2.5メートル。
「このいやらしいラインを入れた。このパーが大きかった」。
続く16番パー3で、10メートルの上りフックラインのバーディへとつながった。

もともと、伸ばし合いより「耐えるコースが、僕には合っている」という。
昨年のこの大会でも4位タイに食い込んだ。
「がむしゃらに、やるタイプ」。
一心不乱なゴルフスタイルに今年、ますます磨きがかかった。
このオフ、東北福祉大の1年先輩・谷原秀人と行ったアメリカ合宿。
「死ぬほどハードなトレーニングで体を絞った」。
その厳しさは半端ではなく、体力には自信があった谷口すら、たびたび胃痙攣を起こして吐いたほどだ。

冬だけではない。
それは、シーズンに入っても続いた。
毎週月曜にジムに通い、毎回、筋肉痛になるまで体を苛め抜いた。

ウエストは、一時期8センチ減。
ショットにキレが出て、飛距離も半クラブ以上は伸びたばかりか、「ケガもなく、疲れにくい体になったと思う」。
少々のピンチにも、へこたれない精神力も身についた。

「日本一を決める大会は、1打1打に集中して、パー取って。チャンスが来れば、という感じ。それが鍵になる」。

1打差2位には、連覇を狙う片山晋呉。
2打差首位には、豪州のポール・シーハン。
「・・・でも、明日は誰にも引けを取らないゴルフがしたい。シンゴさんにも負けたくない」。
憧れのタイトルのために、最後まで「なにくそ」と、歯を食いしばる。

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