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ダイドードリンコ静岡オープン 2000
「2日で終わってくれへんかな。賞金は半分でもいいからこの位置をキープして、コツコツ稼ぎたい」
本文: 海からの強風が吹きあれた難しいコンディションのなか、ベテラン・山本善隆のワザが光った。
2番、414ヤードのパー4。
強烈なアゲンスト風の吹く、ピンまで残り200ヤードの第2打で山本は、3番アイアンを握った。「ちょっとフック目のスウィングにパンチ(ショット)を入れて、軽いドローボールで」(山本)ピン右手前4メートルにピタリと乗せた。
「今週のコースはフェアウェーが狭いし、曲げたら命取り。飛ばしていく若い子にはプレッシャーがかかるわね。きょうみたいな風が吹いたら、距離が出ない僕らでも、そういうワザを使って、同じ条件でプレーできる気がするね。明日からもっと風吹いたら、もっと上に行けるかもしれない」
先週から使い始めた、約35位インチの中尺パターもそんな山本を助けた。「フォローのときは気をつけないと、平気で2メートルくらいオーバーしてしまう」というパッティングでは、新しいパターヘッドの重みをうまく利用して、手堅く沈めた。
「この状況では他が伸びないだろうし、イーブンでまわってこれたのはまずまず。2 日で試合、終わってくれへんかな。賞金は半分でもいいからこの位置をキープして、コツコツ稼ぎたい」と、冗談混じりに語った。 賞金ランクによるシードを落して5 年。このまま上昇気流に乗って返り咲き、といきたいところだが、「実は今は、とてもゴルフができるような余裕はない、という心境なんです」という。
一昨年前に傷めた左手親指筋をかばううちに、昨年は、左ひじも故障。「痛いから、スウィングの途中でショットをゆるめてしまう。でも、それがかえって力が抜けて、いい場合もあるんかな。パットだけは慎重にやってるけど、ショットは変にピンを狙ったり、がつがつしてない。ハタからみたら遊んでるみたいにみえるかもしれません」
昨年12月には、母・マツエさん(享年76歳)が肺炎をこじらせて入院、そのまま今年2月17日に帰らぬ人となった。「オフは看病ばかりで、まったく練習してないんです。開幕したら今度は、法要やらに追われているし…本当はゴルフどころじゃない、という心境なんですけどね。こんなんで、なんでいいのかな」と首をかしげたあと山本は、「法要のとき、お坊さんが説教するでしょう。あれ、いいこと言ってくれはるんですわ。『初心に返って』とかね。あれのおかげかもしれません」と笑った。