記事
ダイドードリンコ静岡オープン 2001
「もっともっと、取組まなければならないことがたくさんある」
最終日。
選手たちが口を揃えた。「浜岡らしい日になった」
遠州灘からの、名物の浜風が、容赦なく吹きつけていた。
打ち下ろしの1番ティにやってきた選手たちはグリーンを見下ろし、みな、一様に苦笑いを浮かべるしかなかった。
「立っているのもやっとの風。2打、3打、…いや、5打差あっても、関係ないと思った」(溝口)
溝口には、勝つ気など、まったくなかった。
同組のウィルソン、島田は、1番をトリ発進。自身もセカンドが風に押し戻されてのボギースタート。
「どのホールに行っても、どっちから吹いているのかさえ、判別できなかったほど」
しかも、途中で痛みが起きてしまうと、棄権せざるをえないほどの、ひどい腰痛を抱えている。
「最後までプレーできるかどうかばかりを考えている状態。優勝は…いったい誰がするのかなぁ、なんてまるで他人事。しかし、だからこそ、3日目まで楽に回れたのだと思う」
同組のウィルソンが15番でダボを打って、2打差ついたとき、それまで考えもしていなかった優勝が、見えてきた。
「そしたら急にドキドキして…『これを入れたら』とか『これをはずしたら』とかプレッシャーがかかって、途端にゴルフが難しく感じた」
18番のティショットを、右の林に打ちこんだ。
球は、3本の木の幹に挟まれ、アンプレヤブルせざるを得ない。
「かっこ悪かった。あんなところであんなショットを打つなんて…本当に恥ずかしかった」
フェアウェーに出してからの第4打は、グリーンからわずかにこぼれた。
「これを入れなければ、恥ずかしさでもう立ち直れない」とまで思い詰めながら打った1メートル半のダボパット。ど真ん中から決めて、ミノザとのプレーオフ。しかし、その1ホール目に、ミノザが、60センチのパーパットをまさかのボギー。
あっけなく決着はついた。
「こんなので勝ってしまっていいのか、と今も思っている」と、ホールアウト後、溝口は繰り返した。
その思いが、溝口の背中を押す。
「体のケア、技術、精神面…もっともっと、取り組まなければいけないことがたくさんある、と今日、改めて思いました。次の3勝、4勝目のためにもね」
最後まで、暖かい声援で勇気を与えてくれたファンの前で、さらなる上昇を誓った。