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<シリーズ>初シード選手に密着② すし石垣「ありがとうの心を忘れずに」

昨シーズン終盤。コースでは、相変わらず明るいパフォーマンスでファンを喜ばせていたすしだったが、いざプレーを終えて、“舞台裏”に引き上げてきたときの表情は、思いのほか暗かった。

賞金ランクは63位につけて、初シードを確定させたことの喜びも、全くといっていいほどない。
「初シードの感想? ただ、予選会に行かなくっていいな、くらいのもんで…」と、どこまでも素っ気ない原因は、すぐに分かった。

自分のゴルフの、特に夏以降の内容に満足できていないからだった。

30日間連続してラウンドした時期もあり、「その疲れからか、後半はまったくクラブが振れなくなって・・・。ひどい状態だった。気温が下がり始めたら、ますますひどくなった」と、振り返る。

技にも、体にも自信が持てない状態だったから当然、精神面も影響が出た。
モットーにしていた「ありがとうの心」。
スタートのティグラウンドで手を合わせ、必ず唱えていたのは「ありがとう。おかげさま。私はいつも運がいい」。

その言葉には自分を応援してくれる人、自分を取り巻く環境や自然界から良い“気”を取り入れて戦う姿勢から、より良い結果を引き出していこうという意図があったのだが、思い通りにならないゴルフや体力に、いつの間にかその気持ちも薄れてしまっていたのだ。

それが、ますます悪循環になった、とすしは言う。

「たとえば、スパイクマークに当たってパットが外れることもあるけど、逆にそのおかげで入ることもあるわけでしょう。それにいちいち怒ったりしていたら、絶対に良いことない。芝生も、生き物ですしね。そこでゴルフさせてもらえることに感謝して、どんな結果になっても、とにかく“ありがとう”の気持ちを忘れずにゴルフをすることが大事なんだ、と。そうじゃないと、良い結果が出ることはありえないんだって痛感した1年でしたね」。

その中で、課題も多く見つかった。
「なんでこんなゴルフしかできないんだ」と、自分にいらだつことも多かった。
「自分のゴルフでは、優勝はまだまだ遠い」。そう身に染みたからこそ、初シード入りできたからといって手放しで喜ぶことはできなかったのだ。

シード元年の今年は、技と体をいっそう磨くと同時に「常にありがとう、の心を持ってプレーすることが課題。やんなきゃいけないことは一杯あります!」とすし。

2007年には、3児の父となる。4歳と1歳の愛娘に続いて「次はぜひ男の子を・・・」と7月の予定日を心待ちにしている。

「・・・子供たちのためにも、稼がなくちゃね!」。
今年は、しばらく休んでいたアジアンツアーへの参戦も視野に入れているそうだ。

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