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アサヒ緑健よみうり・麻生飯塚メモリアルオープン 2006
市原建彦がツアー初優勝!!
もし初優勝できたなら・・・。「必ず記念に取っておく」。
そう心に決めていたウィニングボール。
ホールアウトするなり気前良く、ボランティアにあげてしまった。
首位タイで迎えた最終18番。
タップインで沈めたパーパット。
それがまさか、最後の1打になるとは思ってもいなかったからだ。
知人に土産に頼まれていた、大会特別協賛アサヒ緑健の看板商品『緑効青汁』。
関係者にお願いして、1箱だけ譲ってもらうつもりだった。
しかし、優勝副賞はその1年分。
いっきに“365日分”を手にしても、なお実感は沸いてこない。
「こんなことになるのなら・・・」。
この日、えんじ色のウェアを選んだことを後悔した。
「もっと派手な色にすればよかったです」。
この色だと、地元・ボランティアの皆さんに紛れて目立たないではないか。
この日最終日は5打差からのスタート。
リーダーは、いま絶好調のジーブ・ミルカ・シン。
途中で逆転には成功しても、まさか、勝てるとは思わなかった。
ひとつ後ろの最終組でまわるインドの英雄は再び追いつき、最終ホールで100ヤードもない第2打を残し、グリーンが空くのを待っていたはずだ。
わずかにショートしたものの、アプローチで寄せたパーパットは1.5メートル。
「まさか・・・彼が最後に3パット?」。
プレーオフを覚悟して、球を転がしていたパッティンググリーンで市原は、信じられずに呆然と立ち尽くしていた。
口があいたまま、涙も出ない。
「・・・そのとき、きっと僕はその場に泣き崩れるだろう」と、ずっと想像していた優勝の瞬間。
ずっと心に残る、歓喜のシーンとなるはずだった。
しかしそれは、自分が思ったよりも、ずいぶんあっけない形で訪れたのだ。