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日本オープンゴルフ選手権競技 2000

「最終日はファンとおしゃべりしながらまわる」

約束を守り、尾崎直道がギャラリーと一体となった

 最終日、直道がギャラリーと一体となった。

 1番のティグラウンドにあがるなり、大歓声の渦。それに応えて帽子を脱いで、直道は、何度も大きく手を振った。

 前日3日目。スタートの1番で、「気合が入りすぎて」4パット。
 「あれで僕はもう終わりかな、と思った。荒野の用心棒みたいな、理想の選手像を描いていたけど、それももう卒業。最終日は、思いきりキャデイさんやお客さんとおシャベリしながら笑顔でまわる」と語っていた直道。

 この日は、スタートホールから、それを実行した。

 「頑張れ!直道!」との声援が飛びたびに、その声の方向に向けて、丁寧に手を振る。
 1番のティショットは会心の当たり。「ナイスだ!!直道!」との掛け声には、「ありがと!! でも、良いのはティショットだけなんだよぉ」。笑顔で語りかけ、笑いを誘った。

 各ホール、ティからグリーンまで。ひとホールまるごと隙間なく埋まったギャラリーが、徐々に直道に引きこまれ、味方になっていくようだった。

 「いつも僕は、フェアウェーだけ、ピンだけしか見てないようなゴルフをするんだけど、今日は全然違ってた。3日目は気合を入れての4パットをして気持ちが前向きすぎて、痺れてしまった。これはリラックスしなくちゃいかんということで、今日はたくさんしゃべったし、たくさんの人が応援してくれて、そんな人たちにも毎ホール、手を振って歩いた。いつもと違ったプレースタイル、そういう作戦の勝利というのがある」

 最終18番で、4メートルのパーパットが20センチショートしたときは、大観衆の中から、「パットの天才!!」との声が―。
 声の方に向かって直道は、『その通り!!』とばかりに人差し指を立て、なんともいえない、味わいのある笑顔で応えてみせてから、ウィニングパットを沈めた。
 優勝インタビューで直道は、「たくさんの応援を本当にありがとう」と、心から、感謝の意を述べた。

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