記事
日本オープンゴルフ選手権競技 2000
「15番のパーパット、あれがウィニングパットだったかな」
尾崎直道は、プレッシャーのかかる場面での1メートル前後のパットで、カップを覗きこむようにして右肩が前に出る「変なクセ」がある。
「自分でも、なんであんな変な動きをするのかわかんない」と直道。
この日は7番パー3で、その動きをして1メートルのパーパットをはずした。
しかし、最終日はこの1回だけ。
「前半に苦しいのをしのいで来ていたので、1発くらいはずしても、動揺はしなかったんだ」
2番で3メートルのパーパットを、4番で4メートルのバーディパットを沈め、5番で1メートルのパーパットを入れると、思わず直道は、安堵のあまり空を仰いだ(=写真)。
「手が動かないような中で、あそこまでよくやりました」
後で振り返って、「あれがウィニングパットでした」というのは、15番のパーパットだった。
「右カップ1個分」の1.5メートルのフックライン。
しかし、実際のストロークは「実は、ちょっとプッシュアウトして思ったより右に出た」というように、狙いより膨らんで、一瞬、ボールはカップ右横で止まるかと思われた。
だが、次の瞬間にククっと進路を変えて、カップイン。
「プッシュアウトしても入るんだ〜って内心、思いましたけど、林さんが1ストロークでついていたのは知っていたし、これを入れなくちゃ、逆転される、というプレッシャーのかかる苦しいパーパット。
そんなにいいストロークじゃなかったけど、自分の気持ちが乗り移って、それでカップに吸いこまれたんだ、と思いましたね」
この日の直道には、ショットに難はなかった。
8番セカンドの木超えのバンカーショットを、見事に寄せるなどアプローチにもそつがなかった。弱点のパットも克服し、直道は、総合力で難コースに打ち克った。