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薗田峻輔がゴルフ伝道師に
「ああっ、ゴールあるじゃんっ。サッカーやりてぇ!!」。
3、4時間目の“授業”はスナッグゴルフの実技講習会。しかし、そんなのお構いなしで「今日は子供たちとサッカーをする!」と、宣言した。自分の進路について、真剣に悩んだのが、ちょうどこの日の子供たちと同じ小3のとき。
「サッカー選手になるか、プロゴルファーになるか」。
究極の選択にはもちろん、後悔はしていないがそれでも「もしかしたら今もゴルフ以上かも」と、明かすほどのサッカー好きだ。
「あと、子供も大好き!」。
“本分”をつい忘れて、頑として言う。「今日はみんなと一緒にサッカーがしたい!」と、プロがあまりに熱心に言うものだから、学校の先生たちもスナッグセットのほかにご厚意で、サッカーボールを3つ用意してくださったほど。
宮﨑敏秀・校長先生との今日の打ち合わせもそこそこに、さっそく校庭に飛び出していった。子供たちと年齢的にももっとも近い。若き伝道師はなんの違和感もなく、まだ休み時間中の子供たちの輪に溶け込む様子はやっぱり小3のとき、いたずらが行きすぎて担任の先生に頬を張られたやんちゃ坊主のままだった。
ジャパンゴルフツアー選手会のメンバーたちが、リレー式に全国の小学校を訪ねて歩き、ゴルフの楽しさ、面白さを伝えて歩く“ゴルフ伝道の旅”。
2009年1月のスタートから数えて17選手中、最年少の21歳はのっけから、エンジン全開。ほとんど本能のままに、スナッグゴルフのコーチングセットに駆け寄り物珍しげに、ランチャー(アイアンに当たるクラブ)を手に取り、ブンブンと振り回し・・・。
梅雨の谷間の貴重な夏日に、汗をかきかき「いま、いちばん動きたい盛りなんで」といたずらな笑みで、片時もじっとしているということがない。
そして、そんな伝道師のさらに上を言ったのが、この日の子供たち。「やっぱり、関西の子供は違うわ」と、さすがの薗田もあとから「バテた・・・」と、肩で息をついたほど。ちょっとでも油断しようものならその腕に、2、3人がぶら下がっている。あっという間に取り囲まれて、そのまま身動きが取れなくなる。
最初はあんなに「サッカー、サッカー」と騒いでいたくせに、結局授業の最後にはそんなこともすっかり忘れて「たのしぃ〜!!」と、パワフルで元気いっぱいの子供たちとともに、完全にスナッグゴルフにハマっていた。
パター合戦で3回連続の10点満点をたたき出し、薗田から「神様・・・!!」と、あがめられた3年3組の高尾凜々子(たかおりりこ)さん。
「薗田プロに褒められて嬉しくて。もっとゴルフをやってみたくなりました!」。
クライマックスのラウンド対戦で、プロを相手にみごとパープレーで勝利をもぎ取った3年1組の大島陽輝(おおしまはるき)くん。夢は、プロゴルファーになってあの石川遼と優勝を争うこと。
「・・・いつか薗田プロとも戦ってみたい!」と、思いが膨らむ。
最初は、グリップさえぎこちなかった子供たちも、最後は「薗田プロに教えてもらって上手になれた!」とみな大喜びだ。
「薗田プロは、教え方がすごく上手!」と、子供たちに口々に褒めそやされて、本人もますますその気に。「スナッグゴルフを、もっともっと広めていこうよ」と言い出した。
実は子供たちと同様に、薗田もスナッグゴルフはこの日が初めての経験だった。自然と手に馴染むように、グリップが五角形をしていたり、テニスボール大のボールが実は、ゴルフボールと同じ重さにしてあったりその道具の数々が、初心者でも楽しめるように計算され尽くしていることを知って、虜になった。
「プロゴルファーで、スナッグゴルフの選抜チームを作ろう」と言い出した。「それでさ、オープンウィークにトーナメントを作って子供たちと対戦するの。そしたらさ、子供たちももっともっと、ゴルフが好きになってくれると思わない? テレビに出てるプロと戦った、なんてきっと子供たちの為になると思わない?! あぁ〜、なんかヤベえよ、楽しそう。なんかワクワクしてきたよ!」。
夢を持つことの大切さを語りに来たはずが、自分がいちばんに目をキラキラさせて、尽きない夢を語り始めた若き伝道師であった。