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中日クラウンズ 2011

ブレンダン・ジョーンズが第52代目のチャンピオンに

晴れの表彰式で、大胆にもズボンを脱いで(?)観衆を喜ばせたチャンピオン
慌ててベルトに手をかけた。あいにく雨中の表彰式。どれほど、この日を夢見ていたか。このタイトル獲りに執念を燃やしていたか。
「その証拠に見てください。今日の彼が着ている色を・・・!!。

白井文吾・大会会長の発声で、一気に集中した大ギャラリーの熱視線。たちまち疼いた持ち前のサービス心。こうなれば、披露せずにはいられない。

プレーオフでの決着に、脱ぐ間もなかった黒のレインパンツ。公衆の面前で、躊躇もなくズリ下げた。代わりに中から現れた、目にも鮮やかな青色のスラックス。ポロシャツも青。そして、最後に着せかけられたウィナーズジャケットも青。

本人が、思い描いていたとおりのコーディネイトが完成した。最後は大会カラーのクラウンズブルーで全身キメた。「選んだ甲斐がありました」。最終日の勝負服。開催前から決めていた。
「和合で勝つ」。
今季は、開幕からショットが好調であればこそ。「今年は中日クラウンズで優勝する」と、早々に照準は定まった。
もっとも、難攻不落といわれる舞台はとりわけ小技の技量が問われる。「僕の苦手分野でもある」。
だからこそ、ここで勝てれば自信もつく。

それまで51回の長い歴史は錚々たる歴代覇者も、ひとつ大きな目標だった。中でも89年大会のチャンピオン。グレッグ・ノーマンは母国、豪州のスーパースターだ。「僕も同じ王冠に、名前を刻む。今年はその絶好のチャンスだ、と」。

頂点だけをにらみ、2打差の首位で迎えた最終日は強い風雨の中で、韓国のI・J・ジャンが立ちはだかった。「IJは、深いバンカーに入れては拾い、グリーンを外してはセーブする」。
しぶとくまとわりつかれ、一度は逆転を許した。
15番パー4では、この日唯一のミス。
「7番ウッドでティショットを引っかけた」。白杭すれすれのティショットで大ピンチを招いたが、そこからパーを拾って改めて、「今日は僕のほうが、良いゴルフをしている」。
その確信が支えとなった。

通算9アンダーでもつれ込んだプレーオフ。その1ホール目にバーディを奪い、咆えに咆えた。野太い腕を何度も天に向かって突き上げた。
節目のツアー通算10勝目に、世界記録の「58」を出した昨年覇者の名を挙げて、「遼はまだ9勝。ひとつ先を越してやった」と、17歳も年下の良きライバルにもささやかな優越感・・・・・・!!
同時に若き戦友に敬意を払い「ノーマンやジャンボさん、片山選手に石川選手。過去の素晴らしい優勝者の仲間入りが出来て本当に光栄です」と、感極まった。

他のスポーツ界では震災の影響で、来日を取りやめる外国人選手が相次いでいる。海外ではとくに、原発の影響が懸念される中で、ジョーンズに迷いはなかった。
参戦11年目。「日本の友人もたくさん出来て、本当によくしてもらってきたから。僕には、日本でプレーする義務があると思うから。日本に帰ってきて良いプレーすることが、苦しんでいる人たちの支えになることもあると思うから」。

“第二の故郷”でひと仕事終えて、次週はいったん豪州はキャンベラにあるマイホームに戻る。今年7月には二児のパパ。「優勝は嬉しいけれど、おかげで今夜の飛行機に乗り遅れたよ。奥さんは怒るかな。息子もね」。
1日遅れの帰郷もこの1勝で十分に、埋め合わせ出来そうだ。
  • プレーオフを制して念願のタイトルに勝利の雄叫び
  • IJのしぶといゴルフに集中力を欠く場面もあった
  • 組んで3年になるキャディのスコットさんにも感謝を
  • ボランティアのみなさんに祝福を受けて・・・「いつも暖かいサポートをありがとうございます!」ジョーンズ

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