記事
中日クラウンズ 1999
最終組でデッドヒートをくりひろげた尾崎直道と今野康晴
最終日、最終日、最終組でデッドヒートをくりひろげた尾崎直道と今野康晴の1日を追う。
今野康晴が1番、2番で連続バーディスタートで首位の直道に追いつく。
直道
「前半で離そうとしたのに、取れなくて、今野選手のほうがいいスタートを切った時点で『これは混戦になるな』と思ったよ。最後までもつれることを覚悟した」。
今野
「まだ先は長いし、自分がこのままいけるわけない、と思っていました」
3番で今野がボギー。
「このボギーで気が楽になりました。ボクはきょうは最初から、勝とうという気なんかなかったんです。というのもこれまで、何度も最終日、最終組でまわって優勝を意識しすぎて力が入り、失敗してきましたきから。優勝を意識して勝ってこそ、大物だろって気があったから(笑)。
でも、ふと気付いたんです。初優勝を狙う人間が、そんなに固く考える必要はないんじゃないかって。先輩(日大)の横尾さんも、よく、『そのうち勝てるんじゃない』って言ってくださってましたし。意識しないで、3位くらいを目標に、やったほうがいいって思いなおしたんです」
そのあと、尾崎は4番でボギーを叩き再び今野と並んだが、6番、8番でバーディを奪い8番までパーの続いた今野を2打リード。
9番ミドル。セカンドをグリーン右横にはずして50センチにつけ、辛くもパーとした直道に対し、今野は手前3メートルにがっちりつけてバーディ。1打差に詰め寄る。
後半。
今野は10番ミドルでアプローチミス。いやな距離のパーパットが残る。
今野
「バーディを取ったあとなんだから、ボギーにはしないぞ、きっちり取るぞ、と思った。ここでパーパットをいれたのが大きかった」
これを生かして11番でバーディ。再び、直道に並ぶ。
続く12番。今度は直道がバーディを取り返してまたリード。
今野
「自分が並んでも、すぐ取り返されるパターンで、結局、途中、1度も逆転はしなかったんです。でもボクにはそれがよかったんじゃないでしょうか。いつも追いかけていく感じだったから勝負を気にせず、プレーに集中できた」
15番ロング。直道はワンピン距離につけバーディチャンス。今野は、残り115ヤードの第3打、風向きがわからず、9番アイアンかピッチングが迷う。
結局ピッチングを選んで放った球は、いったんカップの向こう側2メートルに落ち、次に適度なバックスピンがかかってカップまで1メートルの位置に。
直道
「ワンピン距離でいいとこ落としたんだけど、向こうにOKバーディ取られちゃったね」
今野
「どのくらいの位置に乗ってるか、ボクのところからは見えなかったんです。そこそこついたかな、というくらい。とにかく集中して打ったのが、よかった」
直道はパー、今野はバーディで再び横並びに。
16番ミドル(362ヤード)。直道のティショットは左林の木に当たってサブグリーンに落ち、転がってグリーンの手前に。そこから1メートルに寄せる。
今野はフェアウェーど真ん中から2.5メートルに2オン。どちらもバーディチャンスをきっちりモノにする。
直道
「イージーに寄せワン取れるだろうと思ったら、向こうもいいとこにつけてきたね。彼は、初優勝がかかってるのに、ひょうひょうとノープレッシャーに見えたよ。初めて一緒に回る子で、どんな子か知らなかったんだ。ステディでいいスイングしていたね。それに自分のゴルフに徹することができるところがいいね」
今野
「直道さんは、勝負どころで軽くバーディ取ってくる。そこがすごいと16番で思った」
タイで迎えた17番。
6番アイアンで5メートルにつけた直道に対し、今野は6番アイアンで手前3メートル。今野、絶好のチャンスだ。
だがこのホールは両者パーで分け、勝負は18番までもつれこむ。
直道の第2打は右7メートル。だが、1.5メートルの微妙な距離が残る。
今野はセカンド右2メートル。しかし、このバーディチャンスをはずし、先にパーでカップイン。
直道の最後のパーパットは、一瞬、ラインに乗った。プレーオフ突入か…。
今野
「バーディパットは、比較的やさしいラインが残ったんですが、手がしびれてしまいました。フォローで手が動かず、ヒットできずに終わってしまった感じ。直道さんのパーパットが、一瞬ラインに乗ったのでどきっとした。18番は、毎日右のOBが気になって、スプーンで打ってたホール。でもきょうはアゲンストだったので、ドライバーでいったんです。もう2度と、18番のティーショットを打つのはイヤだったから、プレーオフはやりたくないと思いました」。
直道のパーパットは、わずかにカップをそれた。ボギー。今野の初Vが決まった。
今野
「直道さんが、あのパットをはずすわけないと思っていたので、優勝なんて実感わかないですね。こういう勝ち方もあるんだな、というのが正直な感想です。
ずっと、2位か3位のどちらかだろうと思っていましたから、プレッシャーを感じたのは、最後のバーディパットのときだけでした。
でも、朝、アプローチの練習をしたとき、かなり感触がよかったんで、なんとなくいけるな…いえ、勝てるというまでの気持ちではなくて、最初に設定した3位には入れるんじゃないか、くらいの感じでしたね。今年は、あと2回くらいは勝ちたい」
直道
「今野選手はとにかく調子がよかったね。今野くんの出来がよかったんだ。パットでもすんなり手が動いていたし、楽にいれてたような気がする。こんな選手もいたんだね。これからもっとがんばって、大成していってほしいよね。
ボクのほうも、ショットは思ったところに打てているし、調子は悪いわけじゃない。今回の負けで肩を落としていたら、先は見えてこない。気持ちを入れ替えて次もがんばっていく」。