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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2009
賞金レースも最終日
日本なら、ジャンボ尾崎が1973年に記録した26歳を大きく上回るばかりか、世界を見渡しても、最年少の王者が誕生する(※)。
歴史的瞬間を目前に、首位と12打差で最終日を迎える池田勇太はそれでもなお、「何が起きるか分からない」と奇跡を信じる。
受けて立つ石川も、ブレンダン・ジョーンズが、大会新の61をマークして大逆転Vを飾った2007年大会を例に出し、「みなさんも知っているとおり、池田さんはそれ以上のスコアを出してもおかしくない選手」と、警戒心は解かない。
「僕は油断しない。甘い考えはゼロでプレーしたい」。そう言って譲らない。
快挙に浮かれるよりも、いまは目指すべきことがある。
1年のツアー優勝者と、国内の賞金ランクは25位までの選手にしか出場できないこの最終戦。
「毎年、ここに出られる選手になりたい。このコースへの手応えを掴み、来年のこの大会につながるゴルフで終わりたい」。
まさに頂点を目前にした舞台でも、1年先を見据えている。底なしの向上心は今年最後の1日を前に、緩むどころかますます高まる一方だ。
初日、2日目とも最下位の屈辱が、思いにますます拍車をかけた。
激しい風雨と冷え込みに、今週は「どん底からのスタート」。
今度こそ、巻き返しを誓ったこの日3日目は、この大会のためだけに用意したハンチング帽を逆向けに被り、「あとは上がるだけ。今日は真逆のゴルフにしたい」と、意気込んだ。
前半で、4つ伸ばすも後半から降り出した雨に、嫌な記憶がよみがえる。
「初日のイメージが頭をよぎった。それに負けてしまった」と、12番から連続ボギー。
そんなとき、抑止力になったのが他でもないライバルの存在だった。
次の14番で順位ボードが目に入る。
「池田さんが伸ばしていた。気合いが入った」。加えて、後ろの組から聞こえてくる大歓声だ。
石川にも負けない大ギャラリーを引き連れて歩く池田が起こした声援が「もう一度気を引き締めて、と思わせてくれた」と感謝して、16番から連続バーディを取り返した。
「右肩上がりで終われた」と、今週初めての及第点だ。
そしてホールアウト後は、やっぱり練習場に直行して、「あんな良い感触は本当に久しぶり」。いよいよ最終日を前に、正真正銘の手応えを掴んだ。
「あの状態がもう1日続いていたら、ドライバーを振るのが怖くなるところだった」とまで言ったフック球もほとんど消えて、「一番の原因もおさえられて、プラスの方向へ進んでいけそう」と、言えるまでに回復できた。
「4つのトーナメントで優勝できたこともそうだし、海外のメジャーに出場できたこともそう」。
それだけでも内容の濃いこの1年間を、最後の1日でふいにしたくない。
「明日こそ、本当に良い1年だったと言えるようにしなくちゃいけない」。
胸を張って、最終戦の最終ホールに立つために。
18歳は攻撃の手を緩めない。
※海外ツアーの最年少賞金王
<米ツアー> タイガー・ウッズ(1997年、21歳)
<欧州ツアー> セベ・バレステロス(1976年、19歳)
<南アツアー> シャール・シュワーツェル(2004年、20歳)
<豪州ツアー> アーロン・バデリー(2000年、19歳)
<亜ツアー> サイモン・ダイソン(2000年、22歳)