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ブリヂストンオープン 2009

小田龍一は「ホストプロとして恥じないゴルフを」

本戦前日の水曜日は、普段はなかなか見られない選手たちの練習ラウンドが観戦できる開放日だ。

インスタートの10番からスタートした小田は、最後の9番グリーンで腰が引けていた。

「こんなに人に囲まれたことは、初めてなので…」。
目をシロクロさせながら、恐る恐るロープ際まで近づくと、たちまち人波にのまれてしまった。

「先週はおめでとう!」。
「格好良かった!」。
「今週も頑張って」。

もみくちゃにされ、励ましの言葉を一身に受けながら、「これだけサインをしたのも初めてです」と、必死でペンを走らせる。
「こんなに、頑張ってと言われたのも初めてです」と、その反響の大きさに戸惑った。

先週の日本オープンで、今野康晴と石川遼とのプレーオフを制してプロ9年目のツアー初優勝をあげた。その衝撃と余韻は、今週の袖ヶ浦カンツリークラブにもまだ漂っていた。

月曜日から取材の依頼が絶えないし、それは妻も同じでむしろ、優子さんのほうが、本人よりも注目度が高いかもしれない。
たまたま夫のボールが肩に当たってOB方向からフェアウェーに跳ね返り、そのホールでチップインバーディ。優勝をアシストした妻として脚光を浴びた優子さんにまでテレビや、女性誌などの出演依頼が舞い込んで、その対応だけでも右往左往だ。

2人が目立ちたがり屋なら大喜びで応じただろうが、小田は練習場でもいつも、端っこの打席を選んで打つというほど。揃って人前に出るのが大の苦手というから居心地が悪いったらない。

「こういうのがいつまで続くのか…。出来ればみんなに、早く忘れて欲しい。2年くらい早送りしたい気分」と、苦笑いの夫婦は「それもこれも優勝させてもらったからこそで、凄く有り難いことなんですが、それに応えていける自信がない。もう恐縮してばっかりです」と、身を縮めた。

まして予選ラウンドのペアリングは片山晋呉と丸山茂樹と同じ組だ。
特に丸山は、「これまで一度も回ったことがなくて…。お2人とも、僕とはレベルも何もかも違い過ぎるので。とにかく迷惑をかけないように、と今からそればっかりです」と、まるで新人のように、浮き足立っている。

「明日は、クラブを2,3本持って、コースを走り回ります」と、どこまでが冗談なのか本気なのか。
今大会主催のブリヂストンと用具契約を結ぶホストプロは、平常心を保つのだけで精一杯だが、「トッププロに挟まれて勉強させてもらいながら、恥ずかしくないゴルフがしたい」と、その中でも健闘を誓った。

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