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ブリヂストンオープン 1999

「プロゴルファーを支える人々」連載第2回

 クラブ技術の一柳さん、内田さん、本吉さんは、週に100本ものクラブを調整することもあるという。勝負は、大会に入るまでの2日間。めいめいの悩みを抱えた選手たちは、試合が始まるまでに、3人になんとか不安を解消してもらおうと、練習日の火曜から水曜にかけてバスに大挙して乗りこんでくるからだ。
 選手のさまざまなクラブの悩みに答えるためには、「その選手以上に選手のことがわかっていなくては、いけないのかもしれません」とは、クラブ技術歴40年という、内田治夫さん(60歳=写真)だ。

 「たとえば…」と、ブリヂストン契約選手の尾崎直道を、例にあげて言う。

 「直道さんの悩みは、とても感覚的なものが多いんです。…もっとも、プロ選手は誰でもそういう傾向にはあるのですが、直道さんは特にそれが強くて、ボクのところにやってきて身振り手振りで訴える。『なんか、手がこうなって球があっちにいくんだ』とか、『なんかここが、こうおかしな具合なんだ』というような表現で、『だから、なんとかしてね』と、持って来られるです。それでその言葉を聞いて、ボクも感覚的にクラブのライ角が悪いのか? バランスか? シャフトの、フェースの向きが悪いのか…どこが、何が原因でそういうスイング、球筋になってしまっているのか、瞬時に理解してあげなくてはいけない。でも、直道さんのスイングのクセや球筋が頭に入っていないと、きっと途方にくれてしまうんでしょうね」(内田さん)。

 普段から、選手とふれあい、スイングのクセ、球筋を頭に叩き込んでいるからこそ、要求に応えられる。熱心に選手の言葉に耳を傾け、より深く、その人を理解しようとする姿勢。

 クラブにほんの少しでも不安を残したままコースに出ていった選手は、絶対にいい成績など残せない、と内田さんは思っている。だからこそ時には、開催まで夜を徹して全力で調整にあたるのだ。

 内田さんたちの手塩にかけられて、クラブは徐々に選手の手になじみ、やがて、その選手にしか使いこなせない、極上の1本が完成されるのだ。

そして、その繰り返しによって、選手と内田さんの間には確かな信頼関係も結ばれていくのだろう。

 「でも、信用されればされるほど、ボク自身にかかってくるプレッシャーも大きくなっていくんですけどね…。決して失敗は許されないわけですから」(内田さん)

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