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選手会長が登場
列の最初のほうで、選手愛用のオレンジボールへのサインをおねだりした中村弘美さんと思美ちゃん親子。宮本勝昌の頬が思わず緩んだ。「お、いいねぇ、このボール!」と、すかさず合いの手を入れながら、ペンを走らす。一気に場が和む。
「あの雰囲気がいいんです」と、中村さん。ボールは以前、中村さんの地元千葉県で行われたブリヂストンオープンを見に行った際に、会場で本人からもらったものという。
こうして宮本と接するたびに、いつも中村さんが感じることだそうだが「私たちファンに本当に優しく接してくださって。だからお会いするたびにますます好きになってしまうんですよ」。
都内にお住まいの高橋美紗子さんも同感だ。ご結婚されるまで、ゴルフにはまったく興味がなかったが、ご主人の祐也さんに付き合ってテレビ観戦するうちに、すっかり虜に。
そんな中でも宮本の「きれいなスイングに惹かれた」という。そのうち、好きが高じてある日会場に観戦に行き、その人柄を知ってますますファンに。「プロの方って、けっこう“壁”がある方が多いように思うのですが、宮本プロはいつもフレンドリーで、ファン思いの優しい人」。
この日はご自分の番が終わってからも、「もっと宮本プロを見ていたい」と高橋さんはその場に残って、他のファンと触れあう宮本の様子をずっと見守っていらっしゃった。
その間たっぷり1時間。長女の彩夢ちゃんはベビーカーの中で、いつしかすっかり夢の中……。
そしてどんな不測の事態も笑いに変える。ハプニングの時こそ、この選手の真骨頂だ。千葉県からお越しの八尋克仁さんは、ようやく順番が巡ってきて宮本と並んでいざ写メを撮ろうとするたびに、携帯電話にジャマされた。別の場所でフェアをご観覧中の奥様からだったのだが、何度切ってもかかってくる。そのたびに撮影会が中断されて、恐縮しきりの八尋さん。
宮本が、のんびりと笑顔で言った。
「どうぞどうぞごゆっくり。お話が終わるまで待ちますよ!」。
都内在住の磯部昇吾さんも、焦りまくった。撮影担当のスタッフが磯部さんの携帯電話を預かって、シャッターボタンを押すのだが何度やっても撮れない。
サインを待つ人の列は、まだまだたくさんのファンを残したまま刻々と過ぎてゆく時間。
宮本は、おどけてスタッフにダメ出しだ。「選手交代!」。でも担当が変わってもやっぱりダメで、今度は宮本の提案で、磯部さん本人が腕を伸ばして自らシャッターを押すことに。
今度は「カシャ!」。一発で、撮影終了。感心しきりの宮本は「やっぱり、使い慣れた人が押さないとダメなんだね!」。明るい物言いが、気まずい思いでいた八尋さんや、磯部さんの心をたちまち軽くする。あっという間に楽しい思い出に変えてしまう。
一人二役の撮影に、超・ドアップの2ショットになってしまったが、無事写真が撮れてホッとするやら大喜びやらの磯部さん。
「宮本プロの魅力は、いつも優しくてフランクなところ。そして感銘を受けるのは、いつも一生懸命にツアーに貢献されている姿です。今年も選手会長をやられるんですよね!」。
そうです、磯部さんのおっしゃるとおり。2011年、宮本は2度目(3期目)の会長職に復帰した。
今年もまずは一番に、選手とファンの橋渡しに心血を注ぐつもりだ。「ギャラリーとのコミュニケーションがもっと増えていきますように」。自ら率先してファンサービスに心を砕く。一昨年、自身の提案でスタートした小学校訪問「ゴルフ伝導の旅」にも、ますます力を入れて、ジュニアとの懸け橋を作る。
そして“本業”でも活躍を誓った。41歳にして、初のマスターズに挑戦する藤田寛之。兄弟子の大躍進を励みに、自身は今年も例年どおり、「今季1勝」とツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」への出場を、公約に掲げた。ひいては2006年から続く連続試合出場記録の偉業更新を目指していく。
「今年もジャパンゴルフツアーをよろしくお願いします!」。
2011年も宮本会長が、二足のわらじで盛り上げる!