記事
初日の組合せ発表(7日)
7日(木)の午後6時から、大会のオフィシャルホテルのシェラトン・グランデ・スクンビットのボールルームで行われたカクテルパーティ形式の組合せ発表会は、両キャプテンが持ち寄ったドローを順番にぶつけ合うスタイル。
ディフェンディング・キャプテンの尾崎直道は余裕を見せた。第1組の発表を、モンゴメリーに譲った。まずは欧州チームから名前が読み上げられて、コンパニオンが中央のボードに名札をはめ込んでいく。
それに対してアジアチームのシンキングタイムは1分間。しばし逡巡するふりをしながらも直道は、しかし相手が誰であろうとトップバッターを決めていたフシがある。
この発表会に、席を並べたメンバーのひとりがキャプテンに、「いいか?」と念押しされて大きく頷く。直道がきっぱりと名前を読み上げた。アジアサイドの名札もはめ込まれた。
Ishikawa & Oda 11:15 Martin & Montgomerie
スペインのパブロ・マルティンと、プレーイングキャプテンのモンゴメリーを最初に迎え撃つのは石川遼と小田孔明の日本ペア。
小田は、今から決めていることがある。
「ミスしても、絶対に遼に“申し訳ない”と思わないこと」。
それはほかでもない、石川本人から受けたアドバイスだった。
歳は13も下だが、この特殊な団体競技のキャリアは石川のほうが断然上だ。
今大会は初出場の小田に対し、石川は2年連続の代表入り。そればかりか昨年11月には、米国VS国際連合の対抗戦「プレジデンツカップ」という最高峰の舞台を踏んでいる。
そんな18歳の言葉には、説得力があった。
「2人が交互に打つプレーでは、良いショットにはいっしょに喜び、ミスも自分のものにする。2人の気持ちがバラバラにならないように…。2人で1人のつもりでやらなければいけない。それを当たり前のように、やれなければならない」。
だから、互いに失敗しても「なるべく謝ったりしないこと」と、2人で約束している。
そして相手の怪我は、最小限にとどめる。
石川いわく「今年のラフは昨年の倍以上」。
会場のアマタ・スプリング・カントリークラブは小田にとって初めてのコースだが、その手強さを知るには一度踏み入っただけで、もう十分だ。
「ラフに入れたら、7番アイアン以上の番手で打つのは無理」と、痛感した。「絶対にフェアウェーキープ」。しかし、それを石川にまで、強要するつもりはさらさらない。
「遼の性格からいって、守れと言っても守りきらん」。むしろ、普段どおりに「ガンガンに攻めていって欲しいと思う」。
その分、自分が犠牲を払う。“代役”も、すすんで引き受けるつもりだ。開催直前に、怪我のため出場を見合わせた池田勇太だ。バトンを渡されたからには、その役に徹する。ツアーきっての飛ばし屋も、チームのためなら飛距離も捨てる。
「勇太じゃないけど、ティショットはとにかくフェアウェーに置いて、あとは遼に任せる」。
6日の豪雨でフェアウェーですらランが望めず、むしろ小田には「バックスピンでマイナス1ヤードの場合もありえる」と顔をしかめるが、反対に石川は、「去年はランで300ヤード以上出て、ドッグレッグのホールで突き抜けていたのが今年は落ちてすぐ止まってくれるので、計算しやすい」と、正反対の利点を挙げる。
さらに昨年のバーディ率ランキングは石川が1位、小田が2位。「2人揃ってバーディ合戦。それぞれ4個は獲る!」とは小田。
互いの長・短所を伸ばし、補い合う最強ペアが、チームに勢いをつけてくれそうだ。
そのほか、2組目以降の組合せは以下のとおり。
11:29 ジーブ・ミルカ・シン&ガガンジート・ブーラーvsソレン・ケルドセン & ピーター・ハンソン
11:43 チャーリー・ウィ&W・リャンvsアレキサンデル・ノーレン & ロべルト・カールソン
11:57 プラヤド・マークセン&トンチャイ・ジェイディvsサイモン・ダイソン & ヘンリク・ステンソン
直道はモンゴメリーが、ステンソンとカールソンの世界ランク7位と28位の最強ペアを離したことについて、少し意外そうに「モンティは相当に悩んだこととと思う」とその心情を思いやったが本人は、「2人とも非常に強い選手なので、一緒にする必要性を感じなかった」というから、あえてパワーを分散させて、効率的にポイントを稼ぐ算段か。
対するアジアだが、2組目のインド勢はいわずもがなのコンビネーション。
さらに3組目はすでに昨年のうちに、相性の良さは実証済みだし最終ペアは、昨年負けなしの3連勝をあげたタイの英雄。
直道も、大きな期待を寄せている。
そしてなんといってもやっぱり18歳の賞金王だ。
発表会のあとの質疑応答でも即興の英語で堂々の受け答えに直道も改めて感心しきり。
「I said to myself we can just do it(自分たちは出来るだんと言い聞かせてやる)!」
石川が言ったこのフレーズは、今年のアジアチームの合い言葉に決まりだ。