記事

ゴルフ日本シリーズJTカップ 2009

賞金レースを争う2人は……

この日2日目は、池田勇太に笑顔が戻った。なんといっても17番だった。5番アイアンで打った229ヤードの第2打を、4メートル半につけてイーグルトライだ。

下りフックをねじ込んで、万歳ポーズで弾け飛ぶ。

約2455万円の大差は、唯一勝つことだけが逆転賞金王の条件だ。
しかし、前日初日は強い風雨と寒さに水を差された。
満身創痍の状態では見せ場もないまま、石川遼と揃って最下位のスタートに、笑みも消えた。

それだけに「いやまあ、今日はなんかとりあえず、イーグル取ったからヨシとしようと」。
まして、ティショットもセカンドも、イーグルパットも「3打とも、完璧に打てたから」。
その余韻のままに難しい最終18番でも、グリーンを外してラフのくぼみに転がり込んだアプローチも絶妙な寄せで、切り抜けられた。
「良い流れを作って終われた」。
その手応えに、この日の青空のように気持ちも晴れた。

「今日もこれから18ホール回れる身体に調整して、夜は“おやすみ3秒”だ」。
治療と十分な睡眠で、また気持ち新たにコースに立つ。
順位を上げたとはいえ、首位と10打差は厳しい状況と言わざるを得ないが「何が起きるか分からないから。そういう気持ちでやるしかない」と、力をこめた。

対する石川遼は、この日も最下位から抜け出せなかった。人一倍ファンを大切にする18歳は、いよいよこれが今季最終戦というのに大勢のギャラリーの前で、いつものあの胸のすくようなゴルフがまだ披露出来ていない。
賞金王争いというよりは、「そのことが、いまほとんど頭の中を占めていて。悔しくてしょうがない」。

この2日間を振り返るにつけ、「スタートした順位が順位だったので。やっぱり初日のプレーが痛すぎる。初日から、やりなおしたい」。
だからこそ、2日目のアンダーパーは絶対条件だったのだが依然としてティショットに「安定感はまだまだなく。良いときよりも、サイドスピンが懸かりすぎている」。それをカバーするアプローチも、冴えがない。
グリーン上では、3パットが2回。
「ラインを読み間違えてないか、と自分を信じ切れずにインパクトで右に流すストロークになってしまってる」。
1番で1メートルや、17番で手前から2メートルなど絶好のチャンスも外して這い上がれない。

「最下位のまま終わるのは誰でも嫌です。でも、嫌といったら実際に最終日に最下位になった方に申し訳ないので」といつも気配りの18歳は、独特の言い回しで笑わせたが、いよいよ今年も残り2日でそんな悠長なことも言っていられなくなった。

問題は、部門別ランキングだ。
額賀辰徳とトップタイで並ぶイーグル率賞は、とにかくイーグルをひとつでも取らなければ夢と消える。
そして単独1位の平均ストローク賞は、同2位の池田がいま、1打差まで迫っている。
賞金王を含む6つの栄冠に輝くためにも、ここが踏ん張りどころだ。

この日も、ホールアウト後に練習場に直行した石川は「とにかく、ベストを尽くして最終日の18番こそ堂々と上がって来られるように……。どんなに悪くても、最後までついて歩いてくださる方のためにも、魅力のあるプレーで最後まで注目されて終わりたい」。

無事、史上最年少の賞金王についたとしても、このままでは終われない。

関連記事