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シニアのPGAが初の栄冠……!!
過去4大会とも“万年2位”を返上するべく、それほどの覚悟を持っていよいよ大会を迎えた。
そんな決意にさらに火をつけたのが、朝の開会式だった。
女子ツアーの上田桃子選手が、シニアのメンバー全員を「おじいちゃん」呼ばわりしたばかりか「絶対に負けません」とぶち上げたのだ。
女子にはいつも何かと目をかけ、ときには味方にすらなって貢献してきたつもりだったのに……。
恩を仇で返されてはさすがの「おじいちゃん」も、黙っておれない?!
初のタイトル奪還にむけ、いっそうチームワークを強くした。
互いに軽口をたたき合い、時に貶め合うのも、長年の信頼感があってこそ。
そしてさかんに動かしていたのは“口”だけではない。
経験と実績に培われた熟練の技を随所に繰り出し、男女ツアーを凌駕した。
男子にも負けない飛距離で圧倒し、男女ツアーの羨望を一身に集めた。
特に、5年連続5度目の参戦の室田淳の活躍が素晴らしかった。前半9ホールはジェット尾崎と組んだダブルス戦でも、午後からのシングルスでもいずれも最多の4アンダーをマークして、チームに貢献。
今季はシニアツアーの賞金ランキングで5位につけたばかりか、掛け持ちのレギュラーはJGTツアーで同67位。
54歳を超えてなお、両ツアーでシード権を確保する存在感は、いまや若手・中堅の憧れの的でもある。優勝チームから選出されるMVP受賞にも、異論があるはずもない。
分かっちゃいるけど、ひとこと言いたい。
中嶋が「影のMVP賞は司と僕だ」。
今回、他の勝因のひとつとして見逃せないのが前半のダブルス戦。
渡辺司と、若き2人をこらしめた。
賞金王の石川と、ランク2位の池田を2打差で下した。
「あの2人をあそこまで引きずり下ろした。俺たちって凄くない?!」。
今をときめく遼・勇を撃破した喜びに、胸を張らずにいられない。
その中嶋は、朝の開会式でそ女子ツアーを「バラの花」、男子を「ひまわり」に例え、「それに引き替え僕らはドライフラワーだ」と笑わせたが、しかし、まあそれもよく言ったものだった。
確かに、若き賞金王が率いる男子や、平均年齢23歳の女子のようなみずみずしさは、シニアにはない。だが、枯れてなお深みのある美しさを保って咲き続けるその花は、何よりも人々に勇気を与える。
「僕らの元気は日本の元気」とは、まさに言い得て妙である。
17.5ポイントは2位のLPGAに5ポイント差をつける大勝だった。
初めて手にする優勝杯。「こんなにも重かったんだ、知らなかったよ」と、子供のようにはしゃいだシニアの面々。
その表情はどれもこれもが若々しくて、これからしばらくはPGAの時代かも、とつい不安になったほど。
そして、おじさん呼ばわりされながらもなお、女子のLPGAにやっぱりデレデレ。
「僕らはいつでも味方だよ!」と、照れもせずにのたまう様子は図らずも、年齢を経た者だけが持つ懐の深さを漂わせたものだった。
■PGAチーム(シニア)紹介
尾崎健夫(賞金ランク1位)
渡辺司(同2位)
飯合肇(同4位)
室田淳(同5位)
中嶋常幸(同12位)