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ANAオープン 2014
宮本勝昌は「また一歩、近づきました!」
「最終日にCAさんと写真を撮りたい」。
宮本が言ったこのひとことが、新聞報道だけではなく、この日の組み合わせを記したペアリング表にも載っておりそれを踏まえて、気の利いた可憐な声援には、いっそうモチベーションが上がったのは間違いないのだが、それとは裏腹に前半は、じっと我慢のゴルフ。
同じ最終組には谷原と藤本。「上手かった。フェアウェイは外さないし、ピンには寄るし。2人とも凄く良いゴルフをしていた。さすが今や、トップクラスの2人ですね」と揃って好調ぶりを見せつけられれば、なおさら前半の自分のゴルフには気が萎える。
「自分も、チャンスについてないわけじゃないですけど、凄く近いわけでもない。中途半端な距離で、しかも微妙なラインばっかりが残ってしまって」。
とんとんとスコアを伸ばしていく2人を恨めしげに、前半はじっとパープレーに「そんな中で、気持ちをニュートラルに維持するのは難しかった」。ストレスの溜まる展開で、尊敬する兄弟子のことを考えた。
「“藤田寛之”ならこんなときでも気持ちを変えることはないんだろうな」と大いにお手本にして、じっと耐えているうちに、「気が付いたら、その藤田さんに追い抜かれていた。おかしいな・・・」。この日はインスタートの“裏街道”から9アンダーをマークして、一気にスコアボードに載った藤田。
前日2日目は通算の9アンダーで2位タイにつけた宮本に、藤田は言ったのだ。
「トメちゃん(宮本の愛称)は、なんでこんなタフなコンディションの中で9アンダーも出せるの、いいなあ!」とそんな会話を思い出すにつけても、突っ込まずにいられない。
「あなたは1日で、9アンダー出してんじゃねーかよ!」。
思えば、藤田は名匠・井上誠一氏の設計コースで強い。「昨日の夜は、藤田さんと、そんな話で盛り上がったばっかりで。だからといって、9アンダーを出していいのか」と、藤田が通算11アンダーにして上がった時には、宮本はまだひとつもバーディが取れていない状況ではなおさら忸怩たる思いも、12番からようやく宮本もエンジン全開!
そして、17番ではふいに降り出した大雨の中で、チップインイーグルで応戦だ。72ヤードのアプローチは「あまりにイメージ通りに行ったので、ちょっとびっくりしました」と、本人も目も剥く見せ場は「テレビの中継ホールだったのも良かった。今日は、日テレのニュ−スにあの場面が入る可能性がありますね」と、ニンマリ。
最終ホールは谷原のボギーで、最終日を前に、首位に並んで「CAさんにも一歩、近づきました」と、またその点でもニンマリだ。
「優勝より、CAさんと写真を撮りたい」とそこまで言い募る宮本の名誉のために、念のため付け足しておくが、そこにはやましい気持ちは一切なくて毎年、CAさんがズラリと並ぶ真ん中で、勝者が優勝杯を掲げるシーンに憧れているだけで、他意は無い。
特に、大会7勝を誇るジャンボ尾崎。「ジャンボさんのシーンが一番心に残っている」と、自分もあれを再現してみたいのだ。
またこの時期の全日空機では、機内のビデオ放送で前年の今大会の優勝シーンが流れて、それもいい。一昨年は「藤田さんが優勝したのを昨年、見て僕もあれに映りたいなあ、って」。来年は機内で自分の姿を見ながら、会場入りするのも憧れだ。
「勝って今度は僕が藤田さんを泣かせたい」と言った。しかし藤田は「今度は絶対に泣かない」と言い張った。
「いや、泣かせてみせます」との押し問答も、待てよ・・・。「藤田さんが勝って、明日は僕が悔し涙を流すようなことがないように」と、笑った。