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フジサンケイクラシック 2018

星野陸也が最多アンダーで、大差の完全初V

新たにまた一人の若者が、覚醒した。
22歳の星野が大差の完全優勝を飾った。
今年7人目(※1)の初Vリストに名前を載せた。
モンスターとも呼ばれる富士桜で、身長186センチの大器が特大のガッツポーズを作った。満面の笑顔で歓声に応えていたとき、聞き慣れた優しい声を聞いた。

「陸也・・・、陸也!!」。父母の自分を呼ぶ声。たちまち笑顔が涙で崩れた。
「ありがとう陸也・・・ありがとう!!」。
父・宏さんに礼を言われて涙腺(るいせん)崩壊。
礼を言うのは自分のほうだ。
「今まで育ててくれてありがとう」。
溢れる涙に最後は声にならなかった。

首位から出た最終日は2位と5打の大差も序盤、最終組で三つ巴のV争い。
6番パー5のバーディは、入りかけのアプローチで魅せても重永と木下に、一時3差に迫られ「こんなに速攻で、追いつかれちゃうのか。手が震えそうだった」。
押し寄せる重圧は、自らのプレーで振り払った。8番で、4メートルのパーを拾った。
追随を辛くも食い止めると10番、右のカラーから、思ったよりクラブがカツンと強く入ってしまったアプローチ。
「想像の1.5倍くらい強く入ってしまった」。ボールは勢いよく飛び出した。
「頼む、と思ったらピン筋に行って。まさか奇跡的に入るとは」。入ってなければ、きっと反対側のラフまで行っていた。
劇的チップイン。5打リードの振り出しに戻した。13番パー3で3Iのティショットは右キックで入りかけ。さらに14番の3連続バーディで一気に引き離しにかかった。重永が、ひつこく食らいついても17番ではまた長いバーディパットが入った。最後まで、優勢ムードで神がかり的な圧勝を飾った。

通算16アンダーは歴代覇者の松山も、ここで連覇を飾った石川の記録(※2)も楽々と越える、富士桜での最多アンダー記録を更新だ。
いつもは、他愛ないメールで楽しませてくれるマネジメント事務所のアニキ分。
「でも昨日、連絡がなかったのは多分、そっとしといてくれて。いつも通りにやればいい、と」。
石川の無言のメッセージを読み取ればなおさら「嬉しいですね。遼さんが今週、体調を崩して出られない分、盛り上げて優勝しよう、と。遼さんも、嬉しいかな?」。無邪気に目を細めた。

父の手ほどきで、6歳からクラブを握るとすぐにセンスを見せた。数年も経たずに、ベストスコア72の父親超え。
幼いころから、文武共に才能を見せて書道の腕前は、師範クラスだ。父と趣味で始めた囲碁、将棋もあっという間に上達して「作戦を練るのが好き」。頭中で碁盤の目を動かすように、今週の難コースも自慢の飛距離を駆使して緻密に組み立て「マネジメントは、完璧に近かった」と胸を張った。

このオフ、出口(いでぐち)キャディと練習メニューなど、1年の計を立てた際に取り決めた目標は2つあった。
「初優勝と、メジャー出場」。いっぺんに叶えた今、自分が一番驚いている。
「全米オープンも奇跡的に出られたので」。
5月末の最終予選は権利のある上位4人にはもれたが、現地ウェイティングの1番目で滑り込みのエントリー。
結果は予選落ちでも、最高峰の初舞台を貪欲に目に焼き付けてこられたばかりか「今日は優勝も。こんなに早く2つも実現できた。有言実行て、ほんとにあるんですね」と嘆息した。

周りはエリート揃いも自身はなかなか結果も残せず、劣等感すら抱えていた地元茨城・水城高校時代。
「でも陸也なら出来る」と自信をつけさせてくれたのは2つ上の松原大輔。スコア提出所を出たところで待ち構えて「よく頑張った」。
尊敬する先輩に、がっしり肩をつかまれまた涙ぐむ。
感動のシーンで喜びの声を拾う大勢のテレビクルーやカメラマンにモミくちゃになっても頭ひとつ抜けていた。
海外でも引けを取らない長身は、中3ですでに180センチを超えていた。
16年8月のプロ転向から2年。これで賞金ランクは3位に浮上。
「また2勝、3勝としっかり成績を残して、賞金王も狙いたい」。
石川にも負けない猛スピードで、スター街道を駆け上がろうとしている。
富士の麓でそのスタートラインに立ち「いつか、マスターズに出て優勝したい」
期待の大型選手は、夢もでっかい。

※1)今季初優勝者 (< >年齢、( )は大会)
Pピーターソン <29>(レオパレス21ミャンマーオープン)
重永亜斗夢 <29>(東建ホームメイトカップ)
Rガンジー <39>(パナソニックオープン)
秋吉翔太 <28>(ミズノオープン、ダンロップ・スリクソン福島オープン)
市原弘大 <36>(日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills)
出水田大二郎 <25>(RIZAP KBCオーガスタ)
星野陸也 <22>(フジサンケイクラシック)

※2)石川、松山の今大会での通算Vアンダー
・石川遼(09年・通算12アンダー、10年・通算9アンダー)
・松山英樹(13年・通算9アンダー)

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