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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2004

加瀬秀樹「最後には、自分が一番でいたい」

15番パー3でティショットをグリーン右に外した。アプローチも、ピンを大きくオーバーしてボギーを打った。その瞬間、加瀬の脳裏には、長男・哲弘君の顔が浮かんでいた。

先月、哲弘君から託されたメッセージ。
大事にキャディバッグにしまってある紙には、こう書かれている。

“1打1打、てっちゃんのことを考えながら打ってね”

「…だからボギーを打ったら、哲弘のことを考えてなかった、ってことになるなんだよな?」と問いかける加瀬に、かたわらの哲弘君がちょっぴり唇を尖らせながら、こっくりとうなずいた。

哲弘君は前日の夜から、母・文子(あやこ)さんと合流した。哲弘君が会場に来ているときにインタビューの要請があれば、加瀬は必ず哲弘君を伴って会見場にやってくる。

「強い父を見せておきたい」との思いからだ。

息子との約束をかなえるためにも、「15番。あそこは、パーで切り抜けなくちゃいけないところだった」。
最終日を前に、「明日は絶対に、無駄なボギーは打たない」と、心に誓った。

哲弘君のためだけではない。
45歳のベテランらしく、男子ツアーの発展を常に意識しながらプレーしている。
「明日の最終日。この1年の締めくくりの日に、みんなで良いプレーを披露して…。最後には、自分が
“一番”でありたい」。
息子の前で、力強く語った。

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