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RIZAP KBCオーガスタ 2015

最終日が二十歳の誕生日! 池村寛世(ともよ)が初の最終日最終組に

30日の二十歳の誕生日に、初の最終日最終組で回ることになった。それだけで、もう「自分への最高のプレゼント」と、胸一杯。この日は、なぜかくしゃくしゃの白のポロシャツ。同じ組で回った深堀に「明日は最終日なんだから。シワは取ったほうがいいよ」と忠告されて、「アイロンかけます!」。いっそう身が引き締まる。
「明日は、緊張は絶対にする」。何せ3日目のこの日から、「足に地がつかない状態」だった。
6月に、ここ芥屋で行われたチャレンジトーナメント「LANDIC CHALLENGE 2015 ASSOCIA MANSION GOLF TOURNAMENT」で“初優勝”を飾って、出場権を得た自身3試合目のレギュラーツアーは3日目にして、最終組のひとつ前で回ることになり、もうそれだけで、池村の心は震えていた。

ティショットは散らばり2番、4番でボギーが先行。「開き直った」。6番で、やっとフェアウェイをとらえた。「落ち着いた」。次の7番もまたフェアウェイをキープして、ピンそば50センチのバーディを奪った。そこから3連続で、完全に我に返った。

「小学生のころから飛んだ」と、今週計測中のドライビングディスタンスは3日間平均300.33ヤードでランク3位。自慢のドライバーショットも今は、「たまに逆球が出る」と、この日最後の18番も、左のOBギリギリでも、そこから2メートルのバーディでしぶとく粘った。
「明日も、緊張しないわけがないので明日も、最初に崩して早めに開き直りたい」と妙なゲームプランも、無印の19歳にとっては、それはそれで得策なのか。

地元鹿児島県で、幻のサツマイモと言われる「紅はるか」を栽培する父・聖司さんのすすめで10歳からクラブを握るも、キャリアは農家のほうが上である。
小3から家業を手伝い苗植えから収穫まで、ひととおりの行程がこなせる。今も試合がない週には、父を手伝う。

志布志中から尚志館高に進み、1年時には国体で個人優勝。息子の才能を見いだし豪州留学を勧めてくれたのも父。かつてカーリー・ウェブを指導したというピーター・ハリントン氏に師事するなど、恵まれた環境で腕を磨き、帰国後すぐに高校中退。2013年にプロ転向を果たすなど、お膳立てをしてくれた父だが「試合に出られなくなったらプロはやめろ」。

初年度の昨年こそ資金を援助してくれたが、今年は3月の宮崎オープンの優勝賞金100万円をやりくりして、チャレンジトーナメントを回っている。貯金が尽きれば、4人弟妹の長男がサツマイモ農家を継ぐしかない。
「でも、僕はゴルフをやりたいので」。跡継ぎのプレッシャーも「それがあるから頑張れる」と、逆にゴルフの励みになっている。
父の作ったサツマイモはこれまた、幻の焼酎と言われる「魔王」の原料になっているそうだ。まだ19歳の生産者の長男はもちろん、「まだ呑んだことはない」が最終日の二十歳の誕生日に初優勝なら、浴びるほど飲める。

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