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トップ杯東海クラシック 2014
S・H・キムが日本ツアー初優勝【インタビュー動画】
一時は独走態勢を築いた金亨成(キムヒョンソン)が、12番でOBを打つなど、信じられないような崩れ方をしていくのを目の当たりにして、「まだ僕にもチャンスはある」と一転、反撃に転じた。さらに14番では、9メートルのバーディトライをねじ込み首位に躍り出ると、ますますその気に。
そして屈指のパー3で、完全に勝機を掴んだ。「地獄谷」と呼ぶ選手もいる三好の16番。左の崖下に落とせば一巻の終わりとも言われる鬼門で亨成(ヒョンソン)に負けじと5メートルのバーディチャンスを入れ返した。最後の難所を前に、2打差を守った。難易度1位の18番は、ラフからの2打目も「ここはボギーでいい」と冷静に刻んで逃げ切った。
2004年は高校3年生でのプロ転向から10年目に今年は韓国ツアーでも初優勝を飾り、やっとその才能を花開かせた。
負け知らずのジュニア時代。「プロでもすぐに勝てる」と本人もたかをくくっていたが、思いのほか時間がかかって「自分でもどうしてなのか。僕が教えて欲しいです」。
日本ツアーは歴代の賞金王の金庚泰 (キムキョンテ)や、裵相文 (ベサンムン)と同い年。ジュニア時代からの親友でもある。「自分が勝てない間に、どんどん活躍して世界に出ていく彼らを見ているのは正直、つらかった」。今年は5月にSKテレコムオープンで、その庚泰 (キムキョンテ)を下して頂点に立った。
「いつか、きっと自分にもチャンスが訪れる」と辛抱強く待ち続けた歓喜の瞬間は意外とあっけなく、むしろ母国で味わう初Vよりも、「今日のほうが緊張したかもしれません」。
6つ年上の亨成(ヒョンソン)の人気は、韓国ではそれは大変なもので、「僕もずっと、目標にしてきた選手でしたので」。そんな先輩を相手に難コースでの死闘を制し、また選手の層も厚く、ずっとそこでの活躍を夢見てきた日本ツアーで、来日2年目の初優勝もまた格別で、28歳の喜びも倍になる。
「日本での優勝が目標でした」と、それをまさに叶えたばかりの優勝会見で、次の目標はと聞かれても、「正直、急には考えられない」。優勝スピーチも、とっさに言葉が出て来ずに、通訳をかって出てくれたマネージャーの楠谷尚美さんに助けを求めてボソボソと、たどたどしく言葉をつむぐ初々しさだ。
近頃の若手選手は韓国選手もすぐに、米ツアーの参戦を真っ先に目標に掲げるが、「僕にはまだまだ足りないものが一杯あるので」と控えめに、「まずは日本で認められる選手になって、考えるのはそれからですね」。この1勝をきっかけに、日本でますます存在感をアピールするつもりだ。