記事

関西オープンゴルフ選手権競技 2018

時松隆光が面目躍如のツアー通算3勝目

プロがアマを追いかける展開で、ほっと安堵のツアー通算3勝目を飾った。日本最古のオープン競技に84代目の覇者に名を刻んで「恐縮です」。時松が、逆転で二十歳のアマを下してプロの面目を守った。

1打差2位から出た最終日は「まあまあ焦ってスタートした」。
練習グリーンで、谷口徹に言われた。
「久保田くんに負けたら坊主な」。
先週、3度目の日本プロを制したばかりの大先輩。
聞かなかったふりも出来ずに「そうしたら、いきなりバーディ、バーディですからね」。久保田さんに、序盤でいきなり3打差つけられ冷や汗たらり。

「やっべーなと思った。今平さんも言われたみたいなので。2人とも負けたら今平さんを見てから(坊主)にしようと思いました」と、さっそくしたそんな半分冗談の覚悟も「逆に、リラックス出来たかもしれない」。
アマが相手とムキになり、「仕掛けていっても、僕は自滅をするタイプ。そんな技術もない。元々パーを積み重ねていくスタイル。我慢比べでもない」。
持ち味で勝負しようと腹が据わった。
「僅差だと、ぴりぴりすることもある。でも先にぽーんと行かれた。気楽に、2位でいいや、と。気持ちをコントロールすることが出来た」と安定のゴルフで淡々と、ホールを重ねていくことにした。

10番のバーディでついに首位を捕らえたのも一瞬、11番ではディボット跡から打った3打目がトップした。パー5で痛恨のボギーに再び2差も、静かに相手の出方を伺った。
「必ず波は来る。ボギーを打ちそうな終盤に、頑張るしかない」と、時松が予見したとおりに転機は来た。13番で、ダブルボギーを打った久保田さんに追いついた。久保田さんがOBを打った15番では、90ヤードの第3打をSWでグリーン奥からバッグスピンで戻して1.5メートルのバーディを奪った。勝負どころを逃さず最後は今平との一騎打ちで43年ぶりの連覇も封じた。

昨年のブリヂストンオープンではツアー通算2勝目を挙げたといっても大型の台風で、最終日の競技も流れて36ホールの短縮だった。
「1勝目は運、2勝目から実力。でも僕は2勝目も運でした」とあの時も、恥ずかしそうに言った。
「今度こそ、72ホールしっかりやって自信になる」と、せっかくうしろめたさを払拭して坊主頭も逃れたのに表彰式では世界のアオキに叱られた。
JGTO会長から受けた訓示。
「ウィニングパットを入れたらもっとリアクションをしなさい」。直立不動で聞いた。

優勝の瞬間はもちろん、時松がプレー中もけっしてガッツポーズをしないのは、相手への敬意とコースへの礼儀から。
幼少期から習うコーチの教え。
律儀に貫く姿勢は素晴らしい。
でも先週の日本プロで、時松も畏怖してやまない谷口が見せたような、計算も何もない発露のパフォーマンスが人々の心を揺さぶるのもまた事実である。
青木に諭され「優勝の最後くらいはやらないといけないというのが分かった」と、最終日を戦わずして掴んだ前の2勝目では知りえなかった世界がまた開けた。
「そういうのも勉強しないと分からない」。
次の4勝目ではゲンちゃんのレアな魂のガッツポーズが見られる?!

関連記事