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第1回勝紀杯スナッグゴルフ大会開催コースは高橋一家の思い出の地・尼崎テクノランド(兵庫県尼崎市)
もともと、ショートコースだった同コースは閉鎖されたままそれまで7年間、使用されていなかった。「ここを、本格的なスナッグ専用コースにできないか」と考えた高橋は昨年3月、大会用のセッティングをかねて、家族を連れてラウンドをした。
このとき、高橋とペアを組んだ勝紀君は、4アンダーの好スコアをたたき出した。
大喜びの勝紀君は、父親の相手に優勝スピーチの“予行演習”を行ったのだ。
父:「今日の勝因は」
勝紀君:「パットが良かったからです」
父:「体調はいかがですか?」
勝紀君:「バツグンです!」
…しかし、その直後に行われた本番のスナッグゴルフ大会で勝紀君は、母・由貴子さんとペアを組んで惨敗してしまった。
ミスを繰り返して、勝紀君をうまくサポートできなかった母親に「お母さんのせいだよ〜!」と口を尖らせた表情が、由貴子さんにはいまも忘れられない。
「スナッグだけではなく、なんにでも一生懸命になる子でしたね。たとえば学校のプレゼント交換会では、『飛び出す絵本を作るんだ』と言って、それはもう熱中してしまって。私が『もうそのくらいで完成なんじゃない?』って言っても『まだまだ』と言って聞かない。『受け取った子が、ほんとうに喜んでくれるものにしたいから』と、一生懸命になるような子でした。あのひたむきさと、相手を思いやる優しさには、私でも見習うべきところがありました」。
勝紀君を失った悲しみは、完全に癒えたわけではない。
しかし、亡くなったいまでも息子を慕って自宅に遊びに来てくれる友人や、「勝紀君が大好きだったから」といって、今回の第1回勝紀杯に参加してくれた大勢のクラスメートたちが、心にぽっかり
開いた穴を、埋めてくれる気がする。
「…勝紀は、“友情”というかけがえのない財産を、私たちに遺してくれた気がします」と言って由貴子さんは、歓声をあげながら“思い出の地”を駆け回る子供たちに、目を細めていた。