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シード3年目。そろそろ勝ちたい!! 大堀裕次郎
すっかり常連に定着して安泰かと思いきや、実はそうでもない。
メンバー入りには、厳しい審査がある。
シード選手であることはもはや基本事項として「1ホールでも、谷口さんに飛距離で負けてはいけない」。
2月10日に誕生日を迎えた51歳に、よもやオーバードライブされようものなら「もう来るな」。ミスショットで過剰に不貞腐れたり、ルールやマナー違反があれば同様だ。
3年連続で“試験”にパスしてきた大堀だが年々、ハードルが高くなっているのを感じている。そろそろ勝たないと、自分ものけ者にされるかもしれない…」と戦々恐々。この緊張感も、ひとつのモチベーション。
大阪学院大学で同期の木下陵介が、このたび晴れて初シード入りを果たした。
大堀から2年遅れての仲間入りだが、「自分も初優勝はまだ」。
いよいよ同じ舞台でよーいドンする今季は「お互い勝負の年になる」と気が引き締まる。
2月24日から再び始まる“第2回宮崎合宿”では木下も、谷口塾のメンバーに加わる。「シード権は僕のほうが先やけど、そのうち稜介にも上から見られるようになるかもしれない。頑張らないと!」。
初Vこそどちらが先か。
ライバルの“常連入り”も、刺激になるのは間違いない。
先月は、シンガポール(SMBCシンガポールオープン)で今季初戦を済ませたあとは、東京・田町で「トレ合宿」。
専属ジムで、トレーナーさんから課題に出されたのが「バランスの悪さでした」。
専用器具の上で、片足立ちしたりのポーズがうまく取れない。
今回の宮崎合宿で先輩方にもふと弱みを漏らしたら、練習後のケア時に「やってみせろ」ということになった。
すらり長身が、バランスボールの上でオタオタ。
みんなに大笑いされて以来、ことあるごとに谷口からイジられるようになってしまった。
ラウンド中も、突っ込まれるたびに「そこは発展途上なんで」と苦笑い。「トレーニングを積めば、必ず克服できる」と信じているだけに、そこは少し長い目で見てほしい大堀だ。
からかわれても、ネタにされても、毎年この合宿に参加する意義は、計り知れない。
「見習いたいのは谷口さんのガッツと向上心」。
合宿最年少の28歳は、コースから少し離れた練習場へのレンタカー送迎など下働きも増えるが、そんなことはなんでもない。
「谷口さんに、直に教えてもらえるチャンスだから」。
稀有な機会のためならば、多少のことは目をつぶる?!
いやいやいや……。実はただひとつだけ師匠に望みがある。
「谷口さん、お願い。『明日』はやめて…」。
オフにラウンドのお誘いを受けるのは、非常にありがたいのだが、谷口からの電話はいつも急。
翌日の天気予報を見てから予定を決めたいという気持ちはわかるが「裕次郎、明日行かへん?」は、さすがにちょっと…。
「せめて『明後日』にしていただければ」。
このオフこそ若弟子の、ささやかな願いは師匠に届くか。