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ありがとう、佐藤キャディ・・・!!

佐藤さん、ありがとう!! Abemaで初優勝を飾った木下(右)は恩人に感謝。
ゴルフは個人競技だが、支えてくれる人、励ましてくれる人、叱ってくれる人がいるから、頑張れる。ゴルフもチームや仲間の存在が欠かせないスポーツであるということを、しみじみと感じさせてくれる名勝負が今シーズンは相次いでいる。

今年それをもっとも顕著に示しているのが、谷口徹にまつわる“連鎖”である。
これまで26年のプロ人生においては本人には特に師匠と呼ぶ存在はいなかった。20代、30代はことさら誰かとつるむわけでもなく、一匹狼の印象が強かった。
その谷口が、自分よりも一回りも以上下の選手たちに、声をかけて回るようになったのは、40歳の声を聞いた頃である。

恒例にしていたオフの宮崎合宿に、これはと思う選手を誘うようになったのは、年齢とともに低下しがちな自らのモチベーションを上げるためでもあった。
そのため声をかける相手も常に、自身が持っていないもの、持ちたくても持てないものを持っている選手であることが多かった。

その最初の選手が一番弟子の武藤俊憲というわけだがそこから徐々に勢力図を伸ばして、いつしか“一派”と呼ばれるグループが出来上がったのである。

今や“入門”を希望する若手が後を絶たない。谷口のほうも、最近では広く門をひらいて頼まれればアドバイスもしてやる。冗談交じりの憎まれ口は相変わらずでもそこに愛を感じて、慕う選手は増えるばかりだ。

そこに来て、今年は5月の日本プロだ。3度目のタイトルに、50歳のベテランが流した涙が感動を呼んだ。
若い選手たちも共に涙しながら「俺も」と奮い立ったのだ。

その中で、師匠に続いて結果を残してみせたのが「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」を制した市原弘大であり、先週のAbema TVツアー「ISPS HANDA燃える闘魂!! チャレンジカップ」で優勝を飾った木下稜介であった。
共に宮崎合宿の参加者だ。市原はもう常連だが木下は、昨年末に谷口と共に講師として参加した奈良県のジュニアスクールで“直談判”。初参加にこぎつけた新顔だった。
谷口から受けたアドバイスで悩みのショットが曲がらなくなったという木下が、このたびの吉報に際して感謝した人物がもうひとりいる。

プロキャディの佐藤賢和さんは、普段は石川遼の専属をつとめるが先々週まで石川は2週限定で、外国人キャディのサイモン氏を起用した。
その間は手が空いているらしいと聞いた木下が佐藤さんに頼み込み、初タッグが実現したのが「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」だった。

「風もグリーンのライン読みも佐藤さんに聞いたら全部合っていた」と難コースの宍戸では、なおさら助けられることばかりだったという。
2014年のデビュー時から今まで「まずは自分で勉強してみよう」と、ずっとハウスキャディで通してきた木下だったが、プロゴルフの世界に精通したその道の“プロ”から教わることは、甚大だった。

佐藤さんからもらった宍戸での手応えのまま「Abema TVツアー」で初優勝を掴んだ木下。
プロゴルファーは個人競技だけれど、そばで一緒に戦ってくれる人がいてくれるからいっそう頑張れる。
励まし背中を押してくれる大きな存在が、次の世代を育てていく。
今年、喜びと感動の連鎖はまだまだ続きそうだ。

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