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日本プロゴルフ選手権大会 2019
ドラマチックな大逆転V
試合を見ていた誰しもが石川と同じくそう思ったかもしれない。15番終わって首位のジュンゴンとは3打差だった。
しかし17番パー3でジュンゴンを襲った悲劇。1度グリーンまで行ったかと思われたティショットはコロコロと戻って池に落ちた。
「信じられなかった。心拍数があがった。」
石川に突然訪れたチャンス。ジュンゴンは1mほどのボギーパットも外してしまいそのホールをダブルボギーとした。
「不可能だと思っていた『優勝』の2文字が突然目の前に来て、いきなり緊張した。」
しかしきっちりとパーパットを沈め、2人のスコアは並んだ。
それぞれ18番をバーディーとした石川とジュンゴンの決着はプレーオフに持ち越された。
ドライバーにはずっと不安を抱えていた石川。緊張したというティショットは右のOB方面からドローをかけてフェアウェイに落とすつもりが、右のカート道に打ち出てしまった球は道路で跳ねてジュンゴンの40〜50ヤードも先までいった。運を味方につけた石川は、
「このホールで勝負を決めないと。」
残り200ヤードのアゲンストを5番アイアンで打ち、ピン奥4メートルにつけた。
過去逃げ切り優勝が多かった石川は「最後のパットは今までの優勝の中で1番興奮したかもしれない。」とカップ1〜2個スライスするイーグルパットを綺麗に沈めた。
首位タイでスタートしたはずが第3ラウンドは2連続ダボもあり、12番終わってトップのS・ノリスとは7打差。その時誰がこんな結末を予想できただろうか。
今年石川は昨年度の賞金ランキング22位の資格でツアーに出場しているが、複数年シードは持っていない。「正直、カシオまでしかシードがないことが頭によぎっていました。」今年ダメだったらQT行きか。しかしながら実際は生涯獲得賞金ランキングで25位以内の石川は1年間のシード権を行使することができる。「今週になってそれを使えると思って、実は結構ホッとしていました。(笑)」
あの日本に『ハニカミ王子』旋風を巻き起こした大スターがシード権を失うことを恐れていた。そんなギリギリの状態で掴んだメジャー大会の称号、そして5年シード。
「世界一幸せだと思っています。」
優勝スピーチでは笑顔でそう語った。豪雨の影響で誰よりも大会の開催に複雑な思いを抱いていた石川。しかし週末は天気も回復してきてたくさんの方に見に来ていただいた。
まさかこんないい終わり方できるとは思わなかった。この感動の優勝はきっと被災された方にも届いたはずだ。
アメリカから帰ってきて2年半。取り組んできたことは間違いではなかった。「常に目指しているのは世界だけど、ゴルフとの向き合い方、世界の選手が何をやっているかを基準にしていきたい。」常に目標は高く意識し、自分を見失わないように戦ってきた。
「今の状態でゴルフができれば、これからの後半戦もすごく楽しみ。」
そして東京オリンピック代表への意気込みも忘れない。「これでワンチャンス、掴みに行ければ。」また今後の石川のゴルフを見るのが楽しみになってきた。
この優勝は石川にとっても、そしてゴルフ界にとってもきっと大きな意味のある優勝になったに違いない。