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日本オープンゴルフ選手権競技 2021

祝・圧勝。ノリスが日本タイトルを捧げたかった3人の大切なひと

こう見えて、すぐ泣いちゃいます©JGTOimages
94年のジャンボ尾崎を超える大会最少スコアで、4差の圧勝を飾った。
自身2個目の日本タイトルで、通算6勝目を達成した。
南アのノリスには、今週ぜったい勝たなければならない理由があった。

優勝を捧げたい人が、少なくとも3人いた。
「まず一人目は妻に」。
キャンディスさんは、来年3月に誕生予定の第二子をおなかに抱えて、
母国で夫の吉報を待つ。
「妻のためにも勝てて本当に良かった」と、安堵する。

また2人目はジュニア期からの恩人。
ブリジットさんは、ノリスの地元プレトニアでその地域のゴルフ協会の職員を長く務めていた人で、ノリス一家と家族ぐるみのつきあいだった。

「3年前に父を亡くした時も”あなたが楽しんでプレーすることが結果につながるのよ”と。精神的にも支えてくれた」。
その彼女がいまガン闘病中で、夏の一時帰国で訪ねた時は脳卒中を併発し、今も危険な状態にあるという。

「彼女のためにも勝ちたいんだ」と、2日目に首位に立った時から繰り返していた。
「彼女にも良い報告ができる」と、涙ぐむ。

そして、最後はいつも隣にいる弟に捧げる。
キャディで支えてくれる4歳下のカイルさんは、この日17日が、ちょうど35歳の誕生日。
「優勝して祝おう」と、固く約束していた。
「今日は2人で乾杯できる」と、ささやかな宴のあと、カイルさんは翌日にも緊急帰国する。

持病の高血圧の薬が日本の処方箋では効かず、一時は重篤な状態に陥った。母国での集中治療を要して、今年はこのままもう日本には戻れない。
「どうしよう…」と、ノリスは本当に困っている。

キャディ業のほかにも交通や宿泊の手配など、すべて弟に任せきり。
「タッキュウビンだってこれからは自分でやらなくちゃいけない。できるかな…」。

精神的な支えも大きく、「ZOZOチャンピオンシップ」の出場権がかかっていた先週の「ブリヂストンオープン」で、2打足りずに資格を外れて落ち込むノリスを、再び前に向かせたのもカイルさんだった。

兄弟げんかで熱くなり、どんなにコースでののしりあっても翌日には「アニキ、今日も頑張ろうゼ」と、けろりと笑う。
弟の明るさに、今までどれほど助けられたか。

1歳下で、真ん中の弟のエレインさんにきゅうきょ代役を頼んでみたがコロナを理由にビザが申請できず、今後はハウスキャディさんや、セルフカートの戦いを余儀なくされる。
「自分ひとりでやれるかな…」。
不安で一杯だが、弟と今年最後のタッグで賞金ランキングは一気に7位に浮上。
コロナで来日が遅れ、今年4月の開幕戦でやっと合流した当初はあきらめていた悲願の賞金王も、夢ではない。
2年連続で、今平周吾に2位で敗れた19年は、弟もがっかりさせた。
「今年も頑張ってみようかな」。
次週からは故郷で待つ弟への吉報が、孤独な転戦のよりどころとなりそうだ。

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