講堂で、在校生たちと校歌を斉唱したとき、歌詞が自然と口をついて出た。 「忘れている、と思っていたのに。意外と覚えていたのには、自分でも驚きだった。 歌と一緒に、昔の自分を、思い出しましたね」。
2002年に賞金王。一昨年前には深刻な病いを克服し、日本オープンのチャンピオ ンに。
その輝かしい功績が評価され、昨年は地元・橿原市長から感謝状も贈られた。 名実ともにトッププレーヤーまで登りつめた谷口が、“後輩”たちにプレゼントを携 えて、母校のグラウンドに帰ってきた。
この日1月20日(金)、谷口は橿原市立耳成南小学校にスナッグゴルフのコーチング セットを寄贈した。 「たくさん賞金を稼いで、社会貢献に役立てたい」。口癖のように語っている夢を、 またひとつ実現した。
講堂で寄贈セレモニーを行ったあと、自らも校庭に出て子供達の輪の中に入っていっ た。
13歳のとき、自分がたちまちゴルフに虜になったときのように。子供たちにもその楽 しさを知るきっかけを持ってほしい。その一心で、手取り足取りの実技指導。
昼食時には教室に入り、4年1組の生徒に混じって給食を囲んだ。 午後からは5年生の学習会に参加して「プロゴルファーの仕事」という講義も行っ た。
校内を移動するたび、拍手と握手の嵐。 子供たちが目を輝かせて、口々に谷口に質問を浴びせかける。
そのひとつにこんな問いがあった。 「谷口選手が、プロとしての誇りを感じるときはどんなときですか?」。
「在校生のみなさんと、こうして一緒にスナッグゴルフができること。みなさんに、 ゴルフの楽しさを伝える機会を与えられたことに、プロとしての誇りを感じていま す」。
迷わず、そう答えたのだった。