通算14アンダーまで伸ばして日本タイトル2勝に王手をかけた。
4人タイの首位から出たこの日は1番で1.5メートル、2.5メートルを入れた2番で連続バーディを決めると3番では、7メートルも残したパーパットも沈めるなど一時期は、「もう片手で打とうか…」などと、思い詰めたパットのイップス症状も、嘘のよう。
ショットもビタビタついて、ミスといえば2打目を左の深いバンカーに入れた3番や、ピン17メートルから3パットを招いた15番の第2打くらい。
日大の三島寮で4年間を過ごした馴染みのコースで行われているプロ日本一の舞台は「応援してくださる方が、いつもより多いかなと感じる。多ければ多いほど僕は嬉しい」と、3日目の最終組で早くも地元ファンを沸かせて、Vムードを演出した。
ツアー2勝目を飾った昨年11月のカシオワールドオープンでは、「水の中でパターをしているみたい」と、深刻な症状を語り、グリーン上でもキャディさんと、何度も苦笑いをしていた。
どんなに克服につとめても、「イップスに完治はない。一生つきあって行くもの」とは、よく言われることだが、「どんなことにも原理原則はある。それを突き詰め確実に治す方向で考えている」と、断固として俗説にあらがい、今夏約1ヶ月のオフは、日大先輩の丸山茂樹や矢野東らをたずね歩いて懸命に方策を構築してきた。
絶対に諦めない男は、「まだまだ完璧ではないが、見当違いなパットはなくなりました。やっと並みの人間になってきた」と、相変わらず明るく笑い、後半13番ではカップにやや背中を向けて打つような難読の6メートルを沈め、14番では10メートルもねじ込んだ。
15番の3パットボギーを挟んで16番では1メートルを逃さず、17番も右手前の7メートルを沈めて、この日3度目の連続バーディで2位の嘉数を3差で突き放して自身10度目の最終日最終組に挑む。
最初の優勝も、5年シードがかかった2019年の「日本ゴルフツアー選手権(現・BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ)」だった。
「あのときは初優勝の重圧もありましたし、その前に2回こけた(2位敗退)というのもありましたので、ほっとひと安心。でも、明日はそういうプレッシャーはない。いいプレーができれば優勝できるかな」と、自信満々。
「目の前の1打に集中し、その流れ作業を続けること。その積み重ねだと思っています」と、気負いもない。