石川の史上最年少V(2007年、15歳)を見てプロに目覚めた。
「ずっとテレビで見ていた遼くん世代。そういう方にお祝いをしてもらえた。特別な優勝になりました」と、通算3勝目の喜びも倍に。
改めて石川への尊敬を深めたのは先月だった。
選手会主催大会「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」での石川の優勝に、平田も駆け付けた。
実行委員長として盛り上げの先導に立ち、最後は自身の優勝で飾った石川を祝いながら、「遼さんにしかできないこと」と、新たに羨望したばかりだった。
その2大会後に、石川に祝福される立場となり「ほんとうに嬉しかった」と、普段クールな頬が緩む。
「18ホールが終わってから自分を評価したい」との信念から、コースでは無表情を貫くが「けっこう熱いし秘めた思いは相当です」とは、桑島キャディだ。
契約メーカーミズノの女部田(おなぶた)さんは、平田のこだわりの一面を明かす。
「特にウェッジです。使いこむと摩耗するし、さびが出てくるので、同じモデルで新品のピカピカを提供するんです。でも、きれいすぎて感覚が違う、という。それで、今年はわざとまんべんなくさびさせたものを渡すことになりました。長年やってきましたけど歴代のミズノ選手で、そんな要望を聞いたのは初めてでした」と、笑う。
「見た目は現代っ子ぽいんですけど、クラブの好みや小技の上手さはベテラン並みです」と女部田さん。
その分、初優勝は昨年の「ミズノオープン」だったし、今回の通算3勝目もまた、実は先週の「日本プロ」の杉浦悠太(すぎうら・ゆうた)に続くミズノ勢の連勝。
受けたご恩はちゃんと律儀に倍返す。
4月の「関西オープン」では2日目に首位に立ったが5位で負け、さらに翌日の「全米オープン」予選では、最後のひと枠を争いプレーオフで敗れた。
「自分の地元関西で、応援してくださる人も多かったので勝ちたい思いがすごかった」と、珍しく感情をあらわにしていた。
昨年2勝で、賞金6位につけた。
「昨年以上に大事になる」と、迎えた。「今年は早く勝ちたい、と思っていて、悔しい思いもたくさんしたのでこの1勝は、昨年の2勝よりも意味がある。特別です」と、今度こそ喜びをあらわにした。
同じ関西で、同学年の蟬川泰果(せみかわ・たいが)と最終日最終組で初めての直接対決も、淡々と逃げ切ったようだがそうではない。
「爆発力があるし、彼は脅威」とスタートからひそかに神経をとがらせ、5番から3連続バーディで一時5打差をつけても油断せず、「自分が伸ばさないと勝てない」と、意識したのも最後まで目の前の蟬川だけだった。
残り245ヤードから3番ウッドで楽々2オンした13番パー5が勝負の分け目。
「飛距離アップ」にこだわり、トレーニングを重ねてきた成果を示す渾身の1打となった。
長いイーグルトライは、2メートル弱もオーバーし、微妙な距離のバーディパットとなったが、「前ホール(12番)で3パットボギーの気持ち悪さがありながらも決められた」と、バウンスバックでとどめを刺した。
「蟬川選手と初めて最終日最終組で回って優勝できたのは良かった」と、熱い思いの分だけ充足感もひとしおだ。
昨年は、126位で予選敗退した試合。
でも、今年はここまでただ一人、出場全試合で予選通過を続けており、11試合目の優勝で、一気に弾みがつく。
派手に水浴びしたため、表彰式では白×紺のウェアに着替えをしたが、今年は毎最終日に必ずピンクのウェアを着用。青が続いた昨季からのイメージアップを図る。
同学年の中島啓太(なかじま・けいた)が今年3月に欧州・DPワールドツアーで初優勝した際に、すぐにお祝いのメッセージを送った。
「彼は人間性も素晴らしいので、自分のことのように嬉しかった」と喜び「自分もいつか世界で」と夢は見るが、「ただ今の自分の主戦場は日本。みんなでこの日本ツアーをもっと盛り上げていければ見てくださる方にも喜んでいただける」と、秘めた思いがある。
欧州ツアーで転戦を始めた桂川有人(かつらがわ・ゆうと)と交代する形で、シーズン途中に選手会理事に初就任した。
「わからないことばかりですが、先輩方にもいろいろお聞きしながら頑張りたい」と語るその視線の先に、理想の人が見えてくるようだ。