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FedEx St. Jude Championship

「申し訳ないけど優勝させてもらいました」“代打キャディ”も感服させた松山英樹の通算10勝目

松山英樹が度重なるピンチを乗り切り、プレーオフシリーズ初戦を2打差の通算17アンダーで逃げ切った。



10勝目の“チーム”の撮影会は、普段見慣れない顔触れとなった。

「なんか自分、ほんとなんもできないんで。そばにいただけで、申し訳ないけど優勝させてもらいました」と、田渕大賀キャディ。
パリ五輪で銅メダルを獲得したあと、経由したイギリスで、松山自身は財布と、早藤キャディと黒宮コーチはパスポートを盗まれて、再発行のために2人はきゅうきょ帰国したそうだ。


代打をつとめることになった田渕キャディは「緊張、めっちゃしました。決まってから寝られなかった、毎日。昨日も寝られなかった」(中継局ゴルフネットワークでの談話から)と、5打差をつけて迎えたこの日も、プレッシャーと寝不足をこらえて歩行。


最終日は一番強い風が吹き、約12メートルを沈めた8番で、やっと初バーディが来た。
5打差のままターンできたが、11番で2個目のバーディを奪った直後に、形勢は急転する。


12番で3パットのボギーを叩くと、14番パー3のティショットが池。ボギーでこらえることはできたが、試練は止まらなかった。

今度15番では、右ラフからクリーク越えの2打目で、思わず松山から「あー」と、声も出る窮地に。

左に飛び、再びラフからの第3打もグリーンに届かず4オン2パット。
ダブルボギーを喫した。

瞬く間にリードは消えた。
昨季年間王者のホブランに一瞬、首位を奪われた。

さらにランキング2位のシャウフェレが、先に通算15アンダーでホールアウトしていた。


強者の大混戦にまみれる大ピンチで見せた強心臓。

17番で、左ラフから作った8メートルのバーディトライで田渕キャディは、「まっすぐ?」と聞いてきた松山に「まっすぐ」と答えたそうだが、実際は確証がなかったそうだ。


でも、言ったとおりに沈めて1打のリードを作り直した松山。

難しい最後18番のティショットはフェアウェイ真ん中に置いた。
ピン約2メートルにくっつけ2差のリードで勝ち切った。


「松山さんに感謝です」と、田渕キャディ。
「一番近くでギャラリーをさせてもらった感じです」と、感激に震えた。

「全部凄かった。非の打ちどころがない。ショットも上手いしゴルフも凄い。ここで10年以上やられているので経験もある。コースも全部分かっている」と、改めて偉業を称え、「今後またPGAツアーに出てくる選手とかにこの経験したことを伝えて生かせていけたらなと思います」(田渕キャディ)。


パリ五輪で日本男子ゴルフにはじめてメダルをもたらしてから、まだ2週間。
節目の通算10勝目もまた、アジア勢初のプレーオフシリーズ制覇という快挙で飾ってみせた。


初の年間王者にむけ、ポイントランキング3位で臨む次戦の「BMW選手権」には、早藤キャディが戻って来られるそうだ。