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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2024

近年まれにみる僅差の決戦。賞金王の可能性を残した6人の戴冠条件と意気込みをご覧ください

ついにシーズン最終戦で、賞金王の可能性を残したのはランキング順にこの6人。

平田憲聖 1億1124万870円
金谷拓実 1億955万1222円(288万9657円差)
今平周吾  9411万707円(1833万172円差)
岩田寛   9313万902円(1930万9977円差)
木下稜介  8837万595円(2407万284円差)
石川遼   8596万510円(2648万369円差)

コロナ禍による統合の20ー21年シーズンでも5人までだった。
これほど多くの選手が可能性を残したシーズンは近年ない。

このため、可能性のある選手たちによる開幕前恒例の写真撮影会でも、この大混雑ぶりだった。



    平田は今季ここまで最多の4勝し、予選敗退ゼロ。2週連続Vで3勝目を飾った9月の「Shinhan Donghae Open」から、賞金1位を守り続けて本大会に入った。

    逃げ切る条件は、賞金2位の金谷が2人までの8位タイ以下に終わり、そのほかの5人が2位以下に終わること。

    本来なら今季一番シビアな4日間となるが「ここ数週間のトーナメントの中では一番
    この順位を楽しみながらできそうな感じです」と気負わない。

    初日の組み合わせはトップ3の直接対決も「お互い目の前でプレーしながらのほうがやりやすい」と、それもむしろプラスに。

    「ツアーに出ている選手なら、誰しも獲りたいタイトル。ここまで来た以上はそこを目指して」。

    26日月曜日に24歳の誕生日を迎えた。
    「いい1週間にしたい」。
    最終日に改めて盛大に祝う。

    賞金2位の金谷には、3年前にも借りがある。
    21年大会も、賞金王の可能性を残して入場。「その時は優勝しないと厳しい状態だったので。結果にとらわれて上手くプレーができなかった」と、初日に21位タイと出遅れ。日に日に挽回したものの、大会3位で、賞金2位。チャン・キムとの差はわずか779万6198円だった。

    そして昨年大会は、すでに前週の「カシオワールドオープン」で中島啓太の賞金王が決まった状態。

    「今回はリベンジしたい。自分のゴルフで状況は変えられると思うので、最後までしっかり自分らしいプレーを貫けるといいな、と思います」。

    大会は過去3回出場して5位(20年)⇒3位(21年)⇒2位(23年)。
    あとは勝つのみだ。

    賞金3位の今平から、同5位の木下までの3人は、勝てば平田がいかなる順位であっても、逆転賞金王に輝ける。

    でも、今平が、会場入りしてきたのは出場選手の中で唯一の水曜日だった。

    今年10年連続10回目の出場を果たした常連。
    6番グリーンの改造などはあるがコースは熟知している。「昨日はゆっくり休んでました」と完全休養に充てて、余裕の貫禄出勤。

    初日は賞金ランクトップ3での同組にも「平田選手と金谷選手は僅差なので、やりにくさがあるかもしれないですけど僕はそんなに差が近いわけではない。いつもの試合の感じでやってます」と話すが、確か18年から2年続けて賞金王を獲った年にも、そんなに気負いはなかったような。

    初日は平田、金谷、今平が同組対決


      岩田は先週の「カシオワールドオープン」で今季2勝目を挙げ、賞金12位から4位に急浮上。最後のチャンスに飛び込んできた。
      ベテランの谷口徹から即「キングになれ」とのメッセージが届いたが、シード権を無くした谷口が、来季の行使を迷っている1年シードの「生涯獲得賞金25位内」の資格について、「使ってくださいね」と、返信したら「無視ですね。いつも無視されて終わります」。既読スルーに苦笑していた。

      5年連続9回目の出場を果たす今大会は2位2回(20、22年)と初出場時に3位(07年)と18、21年に5位、8位。

      はなから闘志を剥きだす性格ではないが、大会初制覇で、43歳305日で初賞金王なら2012年の藤田寛之(ふじた・ひろゆき)の43歳169日を抜き史上最年長となる。

      「尊敬する一人。藤田さんも40代に入ってからいっぱい勝っていますから」と、少し触手が動いた。

      照れ屋だから撮影会も岩田(右2番目)には苦痛な時間。ついふざけちゃいます


      木下は、先週の「カシオワールドオープン」2日目に、股関節痛のため途中棄権。大事を取ったが「初めての棄権だったので。悔しかった」と、不在の週末に岩田寛(いわた・ひろし)が優勝。賞金ランキングも抜かれて5位に後退した。

      精密検査で股関節唇損傷と出た。
      「踏み込んでねじり上げるときにまだ痛みが出る。アイシングも届かない」。

      かばいながらの決戦だが、「痛いとか言っていられない。もう優勝しかないので」と決死の覚悟で挑む。

      石川は先週の「カシオワールドオープン」で3打差4位に終わり涙をこぼした。
      賞金ランキングも前々週から一歩後退の6位でこの今季最終戦を迎えた。

      「大会が始まるんだという気持ちと、今年も終わるんだな、という気持ち。両方来ている」と、微笑んだ。

      「先週はすごい落ち込んでショック、というよりは自分自身への悔しさがあったので。勝った負けたというよりは自分の中の戦い。今週は、いろんな選手のストーリーがありますけど、自分は先週の最終日の反省を生かしたい」と、静かに意気込む。

      石川が逆転賞金王に就くには、優勝かつ、平田が2位タイ以下に終わること、とほかの5人よりも条件が多くつく。

      「僕の場合は優勝してもなれない可能性がある。今からなりたいなりたい、と言ってももう遅い。間に合ってない。自力ではないので。だからこそ変な邪念や雑念が入らずにプレーができる」と、少し距離を置く。

      でも、史上最年少の18歳で賞金王を獲った2009年の記憶は残っている。

      「かなり意気込んで、決めてやる、と言って初日に+5の大たたきをしたり」。
      若い自分を懐かしむ。

      自分も含めて6人もチャンスを残した年は、15回の大会最多出場を続ける石川にもあまり記憶はない。
      「珍しいことですし、良いこと。今までは1人、2人がずば抜けていましたけど、今はクオリティの高い選手が多くなり、このレベルの中でずば抜けるのは難しい」。

      今季4勝を挙げた平田でさえ、残り1戦で約288万円まで詰められた。

      「この中で、気持ちをコントロールできた選手こそ最強。今年のどの大会よりも見たいな、と思う。僕も楽しみです」。
      少し俯瞰して、レースを眺める。

      岩田と、木下と、石川は、初日の最終組で回る平田と金谷と今平らのひとつ前でプレー。静と動が激突する

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