妥協のない1打が、反撃の契機をつくった。
4番のパー4。
ピン右からの長いバーディトライでいちどアドレスに入ってから、躊躇するそぶりを見せた。
真剣勝負を激写したい十数人のカメラマンさんの頭が砲台グリーンの向こう側でぴょこぴょこしている。
キャディのライオネルさんに伝えて、視界を空けていただけるように頼んだが、数人が、むしろ大きく場所を変えることでかえって選手の邪魔になるのを懸念したため、完全には空かなかった。
しばらく静止…。
今度は、意を決したように本人が両手を広げて身振りで伝達。
即、構えなおしてバーディ。
距離にして15メートルはあったそうだ。
次の4番では、6メートルものパーパットをしのぐと、次の5番で今度はピンの手前から10メートル強のバーディトライをねじ込んだ。
アンダーパーに戻して流れを作ると、6番で連続バーディ。
9番ではピン奥に置いた2打目が傾斜で寄って約2メートルのチャンスとなり、前半9ホールを4アンダーでターンした。
特に後半、風が吹いた前日初日は最終組の3人共にスコアを伸ばせず、金谷は1オーバーの17位と忸怩たる出だしとなったが「終わってから練習して、ある程度は開き直ってプレーすることができた」と、2日目の「65」で首位と5差の4位タイまで上げてきた。
賞金はいまは2位だが、メルセデス・ベンツトータルポイントと平均ストローク、パーキープ率、パーオン率とトータルドライビングの5部門で現在1位を快走する実力者だ。
プロ転向の20ー21年と、昨季獲り損ねた、逆転の初冠へ。
「いつも通り変わらずにその日のベスト尽くして。アグレッシブなプレーを続けてスコアを伸ばしていきたいと思います」と、2日目の言葉を結んだ。
賞金1位の平田憲聖(ひらた・けんせい)も、負けてはいない。
絶好のイーグルチャンスを打った17番など4つのバーディほか、突っ込んで左奥に落とした5番では、5メートルをパーセーブ。
最後18番では左のラフに落として、「今日一番のピンチ。ダブルボギーも覚悟した」という魔のパー3も「いいアプローチが打てました」と、30ヤードをピン1.5メートルにつけて、しぶとくパー締め。
出場30人中、この日唯一のボギーなしとした。
また第1打をラフに入れたのは 1番と10番だけ。
さらに今季の全日程を消化しながら、予選敗退ゼロの選手は平田だけで、このまま初戴冠なら史上初(85年以降の記録)の快挙となる。
金谷と、今平の3トップで最終組が組まれた初日は、「メンタル面で思うような動きができていない」と、1オーバーの17位タイに留まったが、離れ離れになって解放。
「他の選手のスコアをボードで見ても変化なくできた。きょうはいいメンタルでプレーができた」と冷静さも取り戻し、金谷とは2打差、首位とは7打差の10位タイで週末に入る。
「きょうも練習はしないで体を休めることに力を使いたいな、と思います」。
残り2日の配分も大切に、今季最終戦こそ無類の安定感を武器にする。
賞金レースを争うそのほかの選手は賞金3位の今平周吾(いまひら・しゅうご)が通算1アンダーの13位タイ。
同4位の岩田寛(いわた・ひろし)は通算3アンダーの7位タイ。2番から連続ボギーを打ったが、すぐ4番から3連続バーディで盛り返してきた。
また同5位の木下稜介(きのした・りょうすけ)は、股関節に耐えながら通算1オーバーの18位タイ。
賞金6位の石川遼は通算3オーバーの25位タイから土日の巻き返しに挑む。