絶対有利の状況から、プレーオフに敗れた尾崎直道

　諦めとも、悔しさともつかない表情で、直道が、クラブハウスに引き上げてきた。
　「今日は負けたけどね、少しずつ、優勝に近づいているのかな、と自分で、なぐさめっぽく思ってますけどね」
　悔やまれることは、たくさんあった。
　まず、首位タイで迎えた、本戦の18番ホールの第2打。
　「スライスで打とうとしたら、コントロールが効かず」球は、グリーンサイド左の速報ボードの裏のラフ。臨時の障害物で救済を受けた第3打も寄せきれず、結局、ピンまで4メートルのパーパットが残ってしまった。
　これをどうにか沈めたものの、1打リードできる最後のチャンスをふいにして、プレーオフ。

　その１ホール目は、相手のペーニャも「直道さんは、絶対にバーディを取ると思っていた」とあとで話したように、第2打を、グリーン手前のマウンド越えでピンまで8メートルのカラーに運び、他の2人より有利な状況に持ち込んでいたのだ。
　それなのに…。
　イーグルショットは、カップをかすめて大きくオーバー。
　さらに、３メートルの返しのバーディも、決められなかった。
　「最後の距離感は…いや、悪かったねえ。あらら行っちゃった、という感じ。打ったときカチン、なんて音がしたから、もう、しょうがない…」
　プレーオフに敗れて2位タイに、「充分、充分。1勝もせずに、それでも、自分はいま、賞金ランクトップ10にいられるんだからさ…」と、自身に言いきかせるのが、精一杯だった。

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