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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2009
加瀬秀樹と井戸木鴻樹が好発進
昨年、揃ってシード権を失った。2人とも、その主な原因だったパッティングがこの日は冴えた。
加瀬は長年、愛用してきた47インチの長尺パターを45インチに持ち替え、ノーマルグリップに戻したことが、奏功した。
17番で10メートルを沈めるなど、長い距離も「思い切って打てる」と、その効果を口にする。
長い丈にも「そろそろ飽きが来ていた」といい、去年あたりから試行錯誤を始めていた。
フィーリングを取り戻しつつあった矢先だった。今年7月に、やはり北海道で行われたツアー外競技の北見オープンで、優勝したことで「ますます自信がついた」という。
一方、井戸木はスタートの10番で、1.5メートルのバーディを決めてがぜん、勢いづいた。一見、なんでもないそのパットは井戸木にとっては「もっとも嫌な距離」で、それがのっけから決まったことで、気が大きくなったという。
「ゴルフもこれだけ長いことやっていると、雑念が入ってしまうんやね」と井戸木は笑う。
無心で打とうと決めても、構えた瞬間に「右に曲がるんやないか、と思ってしまう」。それで、左に大きく曲げる。
その逆もある。
「そのうち、わけわからんようになって・・・」。
両手で1メートル前後の距離を作ってみせて、「こ〜んな短い距離が、ほんまにどっかに飛んで行ってしまうんよ」と、顔をしかめる。
「経験で得するときと、損するときと・・・。あきらかに、今の僕は経験で損してる。ほとんど、病気やね」と、また苦笑・・・。
それでも、アドレスの向きを右目に修正したことで、ようやく復調のきっかけを掴んだ。「これまで、ものすごく左を向き過ぎていたみたいで。スクエアと言われる方向に構え直したら、えらい右を向いているみたいで凄く気持ち悪いんやけど・・・。我慢して、構えたらもう向こうを見ないようにして、“エ〜イッ”という感じで打ってます」と、苦しい胸の内を明かした。
井戸木も加瀬も、揃ってシード奪還に燃える今シーズン。
加瀬は、大事な開幕目前に自宅周辺の道路で小さなこぶにつまづいて怪我を負った。
「足が上がっていなかった・・・。老化現象ですね」と苦笑する。
右脇腹をしたたかに打ち、肋軟骨を損傷して1ヶ月間、ゴルフはおろか、寝返りさえ打てず、つらい時期を過ごした。
ようやくクラブが握れるようになったのは、4月末。
ただでさえ火がついた状況で、出遅れた分を取り戻そうと懸命だ。
このオフの3週間も、シード権のない2人は大忙しだった。
59歳のワトソンの活躍は気になりながらも、チャレンジが2試合続き、全英オープンを見る余裕もなかった。
「起きていようと思うんだけど・・・。最初の30分でコテン、だよ」と、加瀬は笑う。
二部ツアーとはいえど、チャレンジも思いのほかレベルは高く、寝不足のまま挑めるほど、甘くはない。
まるで20代の若手のように、出場権の確保に奔走する日々だが、加瀬は「自分のゴルフを見直すのに良い時期。神様が与えてくれた機会」と前向きに捉え、謳歌している。
井戸木は、「全英なんか見ていたら、自信をなくしてしまうしね」と、笑う。
「あんなポンポンとパットを入れられたら嫌になる。僕みたいな選手は、逆にあんなの見ない方がいいんです」。
遠いリンクスで起きた出来事よりも、今は自分のことで精一杯だ。
「そろそろ貯金も無くなってきたからね。頑張らないと!」と、力こぶを作った。