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ブリヂストンオープンゴルフトーナメント 2003

米ツアー撤退から張り合いをなくした日々、再び尾崎直道を燃え立たせてくれたものは・・・

勝負に血をたぎらすような、そんな熱い心を見失いかけていた日々に、再び火を灯し てくれたのは野球観戦がきっかけだった。福岡ダイエーVS阪神タイガースの日本シ リーズ。または、フロリダマーリンズVSニューヨークヤンキースのワールドシリー ズ。

日米の頂上対決をテレビで見るうち、ヒントをつかんだ。それは、「選手とファンと の一体感」。勝っても負けても、ともに喜び、ともに悔しがる。そこに居合わせた全 員が、興奮と感動を共有する。その光景を見るうちに、「俺も、このままじゃいけな い、と」。
プロでやるからには、ファンに感動を与えるプレーをすることが何よりの使命である ことに、改めて、気づかされたのだ。

この日最終日は、ポール・シーハンの好プレーも手伝って、「日本シリーズにも劣ら ない」スリリングなゲームを見せることができた。「たくさんのギャラリーが最後ま で応援してくれたのを力に、勝つことができた。それが、何より嬉しかった」。

その大観衆の中には、誰よりもこの優勝シーンを見せておきたい人がいた。
長男・貴将君と、次男の惇哉君。
3年前、優勝した日本オープンも、やはり応援にかけつけてくれたが、惇哉君は当時 まだ2歳で、父親の優勝シーンを覚えていない。
小学生だった貴将君は、ラグビー部に所属していたが、いまは中1でゴルフ部で頑 張っている。
プレー中、そんな2人の顔がロープの外で見え隠れするたびに、「勝ったら、喜んで くれるだろう」と、この日の発奮材料としたのだ。

激戦を制して家族のもとに駆け寄ると、惇哉君が今度ははっきりと、「パパ、おめで とう」と言ってくれた。
「パパは、人にゴルフを教えるのは好きじゃない、といって普段はあんまり教えてく れない」とは貴将君。「・・・でも、今日のプレーを見ていたら、最高に勉強になった よ!」。強い父親を見せられた。目に入れても痛くない最愛の子供たちからのねぎら いの言葉には、3年間の苦労も吹き飛んだ。47歳。「体がついていけなくって、ときどき、すごいショットが出ちゃったりする」 と自嘲気味に笑う。これから先も、数々の悩みが、完全に解消できるとは思わない。

「正直、これ以上もうゴルフがうまくなるとも思えないし・・・(苦笑)」。レベルアッ プというよりも、今後は、いかに今のゴルフを維持していくか、が課題。パッティン グのイップスも、ますます深みにはまっていくかもしれない。

それでもやっぱり、マムシのジョーは諦めない。「これからも、最後まであがきつづ けるよ。だって、まだまだ、かっこいいジョー尾崎を見せ続けたいから」。区切りの ツアー通算30勝目に、直道がまた新たな夢を見出した。

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