記事

バナH杯KBCオーガスタ 2008

「3社合同プロジェクト」で参戦した中学3年の幡地隆寛(はたぢたかひろ)くんは・・・

通算17オーバーのスコアには、さすがに笑顔も出ない。悔しげにホールアウトしてきた幡地くんを一笑に付して、父・秀則さんは言う。
「ジュニアの大会とはまるで違うセッティング。本人は納得いってないみたいですけど、他のプロに迷惑かけないようにするので精一杯。親から見たら上出来ですよ」。

まして、幡地くんはまだゴルフを始めて4年目だ。
「たった4年でこの場所に立てること自体、ありえないことなんですから。感謝しないといけません」。まだ中学3年の息子に変わって頭を下げた。

今大会主催の九州朝日放送を含めたテレビ朝日系列の3社が実施する「3社合同プロジェクト」は、各大会が決めた試合で好成績を残したジュニア選手を各主催トーナメントに招待し、プロの舞台を経験してもらおうという企画だ。

今年はその対象試合が増設されて、今大会には3選手がその権利を得たが、6月の「JJGAジャパンゴルフジュニアオールスター」で優勝した幡地くんはその中で最年少だったにもかかわらず、
すでに身長が182センチもあり、恵まれた体躯から繰り出す平均290ヤードを超える飛距離は見応えたっぷり。

火曜日の練習ラウンドは、一緒に回った石川遼にも引けを取らない豪打を披露した。
「僕より2つ下なのにすごい球を打つ。僕の方がミスショットも多かった」と、石川からも賞賛は受けたが、「まあ、それもいつもまっすぐ行けばいいんですけどねえ・・・。まだまだ子供で」と、秀則さんは苦笑する。

特に、ツアー特有の深いラフに苦しんだようで、本人も「もっと練習しなくちゃという気持ちにさせられた」という。

大会が始まるまでは、初めてのトーナメントの雰囲気にはしゃぎっぱなしだったという幡地くん。
厳しいセッティングにすっかり打ちのめされたのか、ホールアウト後はどことなく元気がなかったが、まだまだこれから。

幸い、身近に偉大な先輩陣に恵まれている。
米ツアー1勝の今田竜二は秀則さんとも交流があり、幡地くんにとっては小・中学校の先輩でもある。「いつか、一緒の舞台で戦いたい」と、その存在を目標にしている。

やはり広島県出身の谷原秀人も、開催前から何かと気をかけてくれ、月曜日には一緒に練習ラウンドをして、「風の中で低い球を打つ練習と、深いラフから転がるアプローチを教えてもらった」という。

今年の予選ラウンドはあいにくの悪天候で、幡地くんにはいっそう過酷な条件になってしまったが、「ジュニアの試合では、これだけ最悪なコンディションで回ることもまずないから。むしろ、彼には良かったと思います」と、秀則さん。
「結果はどうあれ、とにかくこの舞台を経験できたことだけが、息子にとって大きなこと」。

14歳にとって、この2日間は何かと実りが多かったに違いない。
ぜひ、この貴重な体験を存分に将来に生かし、大きくなって、またこの舞台に戻ってきてもらいたい。

幡地隆寛(はたぢたかひろ)
広島県・三原市立宮浦中学校の3年生は、三原西小5年時からゴルフを始め、わずか4年でめきめきと力をつけて、「3社合同プロジェクト」の対象試合だった今年6月の「JJGAジャパンゴルフジュニアオールスター」で優勝(141ストローク)を飾り、このバナH杯KBCオーガスタの出場権を
た。
ベストスコアは66。身長182センチ、体重69キロから繰り出すドライバーショットは豪快で、平均飛距離は290ヤードを超える。
夢は、タイガー・ウッズのような選手になること。
米ツアーで活躍中の同郷の今田竜二には「いつか、アメリカで優勝を競い合いたい」とラブコールを送る。将来が楽しみな大型プレーヤーだ。

3社合同プロジェクト
朝日放送、瀬戸内海放送、九州朝日放送のテレビ朝日系列3社が一昨年から実施する、ジュニア育成プロジェクト。
大会が指定するジュニア大会で好成績を収めたジュニア選手に3社がそれぞれ主催する5月のマンシングウェアオープンKSBカップと今月のバナH杯KBCオーガスタと10月末のマイナビABCチャンピオンシップの3トーナメントの出場権を与えて、プロの大会を体験してもらおうという試みだ。
今週のバナH杯KBCオーガスタは幡地くんのほかに、「全国高等学校ゴルフ選手権大会春季大会」で優勝を飾った鈴木優大(すずきゆうだい)くん(滝川第二高等学校3年)と準優勝の森博貴(もりひろき)くん(福井工業大付属福井高校2年)が出場していた。

関連記事