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国際オープンゴルフトーナメント 中日クラウンズ 2000
「自分に言い聞かせるような感じだったですね」
どうしても、『ただ乗せたい』という気持ちがどんどん出てくる。乗せたらなんとかなる、と体が反応しているところがあるな、と気付いてこれはまずい、と。15番ティショットでは、スプーンでいっとけばいいと思いつつ、あまり弱弱しくなると、その時点で自分に負けて、15、16番の罠にはまるかな、と判断したから。それならばドライバーでとにかく行っとけ〜と思って振ったんですがミスして…。あとで歩きながらやっぱりスプーンで行っておけばよかったと思った。そのへんが成長できていないんです。ここは大きな反省材料かなと思いますね。
9番は、バック9に入ったら1打でも5打リードでもあまり差がないという意識だったんで、もうとにかく4(パー)狙いだった。9番のセカンドは非常にジャッジが難しくて、アプローチウェッジや、サンドウェッジのアプローチになるんで、スピンがかかると手前に戻り、突っ込むと奥にこぼれるという、案外バーディ狙いじゃないホール。これまで出場したなかで、半分くらい9番で奥にこぼしてざっくりやってる。悪いイメージもあったので、4でクリアできれば、という意識もあった。だから、ここのバーディは、ちょっと“余裕かまし”のラッキーバーディ、みたいな感じですかね。パーでいいやというホールでバーディが取れて、4メートルの、距離的には入れときたいパットで、これをはずすと、次のホールからのイメージが悪くなるんで入れときたいというのはすごくあったから。それが入って、『ヨシ』という気持ちになりましたね。
13番のショートでスコアボードを見たとき、『あれ、2位とそんなに差があるんだ〜』っていう感じでした。もちろん、リー(ウェストウッド)と日下部さんを気にしながら、あと、伊沢さんにしても下から来るというイメージがあって、でもそれでも13番まできてそんなに差があるんだな、って。『逃げ切りたいという』後ろ向きの気持ちはダメだから、『いいか、田中くん、4打も5打も差があるんだから、いつもどおりこれまで3日間の攻め方と同じように、パーでいいんだよ。守ることは攻めることなんだからね』と、自分に言い聞かせるような感じだったですね。
このコースは“攻める”という意味を間違えちゃいけないコース。僕にとって我慢するということは非常に難しいことで、でもここはコースのほうから『我慢しろよ』って言ってくる雰囲気がある。そういう意味でこのコースに勝ったとういのは凄く嬉しい。
それとこのコースは、フェアウェーで前上がり、前下がりというライが多い。こういうライは、僕の身長からいくと、たとえば佐々木(久行)さんくらい身長(185センチ)がある人とは、かなり違う感覚になるんです。
12番のセカンドにしてもかなり前上がりのライの100ヤードから120ヤードが残りますし、14番も、16番も前下がりの左足下がりで、ライ的には僕は非常に苦手なんです。大きい人はどんなライだろうが、真上から叩いて行ける。でも僕はどうしてもフラットな軌道になる。いいポジションに運んでも、フラットなライがないというコースは背が低い選手にとっては非常に難しいと思う。そういう中でこのコースで勝てたというのも、非常に嬉しいですね。
自分としては、こんなに差をつけて勝てたっていうことに今はただただびっくりしている。まだピンと来てないというか…。結局、今週は全部で4ボギーしか叩いてないと思うんですが、そういう点ではよかったというくらいで、自信を持つというのにはまだほど遠いですね。
昨日、野球を見ていたら中日ドラゴンズの立浪(和義内野手)さんが初回のノーアウト満塁で併殺打を打って、1点しか入らなくて、7回か8回くらいで自らのタイムリーを打ったときに『わ〜、凄いな』と思ったんですよ。それで、終わったら電話してみよう、とか思っていたら、向こうからかかってきて。それで立浪さんに『明日は気合だぞ、気合入れたら絶対勝てる』って言われて。すごく伝わりましたね。併殺打の後のタイムリーのあとの立浪さんの気合を、電話でもらったという感じがしました(29 日の土曜日は中日‐阪神戦、3-2で中日の勝利)。
それと今週は、水曜日にジャンボさんに会って、『(つるやは)負けたんだってな』言われて、それから握手されたんですよ。『負けたんだってな』で、握手するってのはなんだ?とか思って、非常に悔しくもあったんですけど、その言葉の中には、『もっとしっかりしろよ』っていう意味もあったように、僕的には感じたんです。それでなんかすごく発奮したっていうのはあると思う。
2日目はジャンボさんと一緒にまわらしていただいて、『僕のゴルフも見てください』っていう気持ちでやれたし、いつも言ってる『今後のゴルフ界を背負って行きたい』って言葉が、単なる生意気じゃないっていうふうに、ジャンボさんにも思われたかったから。今回の優勝で、ちょっとだけでもそういうふうに思ってもらえたのではないか、と思うんですけれどね。
今のところ、賞金ランク1位(5200万円)。今後も、できるだけこの位置をキープすることを考え、そして当然、賞金王を意識しながらがんばっていきたいと思います」