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ABC チャンピオンシップ 2006

今週の注目選手・富田雅哉、大会初出場

「僕がなぜシード入りできたのか、自分でも説明できない。だからいまはとにかく練習するしかない」と話す富田。師匠のように、初出場にして初優勝は実現するか・・・!?
感動の優勝シーンから11年。ようやく、ここまでたどり着いた。「これまで、長かったような、早かったような・・・」。遠い目をして振り返った。

95年のこの大会。
田中秀道が、ジャンボ尾崎、尾崎直道らの追撃を振り切って、涙・涙の初優勝。
そのとき、バッグを担いでいたのが富田だった。

当時、岐阜県・中京商業高3年生。
秀道がヘッドプロをつとめる瑞陵ゴルフ倶楽部。
そこに、アルバイトのキャディとして入ってきた富田の仕事ぶりが気に入られた。
秀道に請われてやってきた初めてのトーナメントは4日間、緊張しぱなしだった。

ウィニングパットを決めて秀道がその場に泣き崩れたときもまだ、富田の心は張り詰めたままだった。

“シンデレラボーイ”のウィニングボールを求めるファンにもみくちゃにされ、キャディバッグを守るのに必死だった。
「秀道さんの大切なクラブ。無事、運び終わるまで、僕の仕事は終わりじゃない」。
そんな使命感で心を一杯にして、人ごみを振り切って歩いた。

ようやくキャディの富田にも喜びが実感できたのは、どうにかクラブハウスにたどり着いて待っていた秀道の目が、涙で真っ赤に腫れているのを見たときだ。

「秀道さんが、勝ったんだ・・・」。

緊張の糸が切れた途端にもらい泣き。
その感動は、今も忘れていない。

あのとき、泣き崩れたチャンピオンのそばで戸惑ったようにたたずんでいた痩せた少年はそれをきっかけにプロの道を目指し、今年、いよいよ初シードを手に入れて、この思い出の舞台に初めて立つ。

「・・・僕なんか、まだまだヘタですから。あのときの秀道さんの足元にも及ばない」。
そう謙遜するが、その秀道もやはりあの年が今大会初出場。
もし今週、弟子の富田が頂点に立てば、これ以上ドラマティックな展開はない。

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