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震災の街から広がれ! スナッグの輪

ランチャー(アイアンに似せたスナッグゴルフ専用クラブ)を手に、駆け回る子供たち。今でこそ、笑いの絶えないこの神戸市立六甲小学校の校庭もあの日、傷ついた人たちで埋め尽くされていた。

1995年1月17日。

阪神大震災が、神戸の町を襲った。
同校校長の福本高志先生は当時、教諭として勤めていた神戸市立御蔵(みくら)小学校で、震災にあった。
そこでも、学びの庭は避難所に変わり、負傷者が大勢、運び込まれた。

壮絶な記憶―。

あれから10年以上が過ぎて、街もすっかり元の姿を取り戻しつつある。元気に遊ぶ子供たちに、復興の象徴を見る思いがする。
しかし、その一方で福本校長先生には、あのときのつらい記憶とともに、置き忘れてきたものがあるような気がしている。

それは、「感謝する気持ち」。

震災直後は、自然とボランティアの輪が広がった。
近所同士で協力しあい、動ける者は自主的に人のために動き、そんな中でこんな言葉がさかんに飛び交っていた。
「ありがとう、って。みんな自然と声をかけあっていたと思うんです。でも、生活が元通りになるにつれて、そんな気持ちも薄れていってしまったような・・・」。

いま、在校生は震災の記憶のない子供たちばかりだ。
それだけに、なおさら語り継いでいかなければならないことがある、と福本校長先生は考えている。

「たとえば今回、プロのご協力を得て開いていただいたスナッグゴルフの講習会も、私たち大人も含めてどこか“してもらって当たり前”という気持ちがないだろうか? 恵まれすぎて、見失っているものはないだろうか・・・。あのとき、苦境の中で自然と気持ちが湧き出たように、子供たちにも常に感謝の気持ちを忘れず、自ら進んで汗を流せる人になってもらいたい」。

同校が掲げる目標が、まさに「友情と、礼儀と自主」。
スナッグゴルフが、その一助になってくれれば・・・。
福本校長先生は、祈るような思いで子供たちを見つめていた。
  • 準備も後片付けも、自分たちの手で。そういう姿勢も、一緒に育てていければ・・・
  • 「震災のとき、自然と湧き出した気持ち・・・スナッグを通じて、感謝の気持ちを取り戻したい」と福本校長先生