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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2008
ドンファンが「2011年にまた…!」
大会3日目に「お世話になった報道陣のみなさんに、ぜひお礼が言いたい」と、クラブハウス内のプレスセンターにやってきたドンファンは、流ちょうな日本語で深々と頭を下げた。
「(成績が)良いときも、悪いときも、みなさんがお話を聞いてくださったことで、いつも元気になれました。ほんとうにありがとうございました…!!」。
2005年のファイナルQTで58位につけて出場権を獲得し、翌年に日本でプロデビュー。当時は「ありがとうございました」も、きちんと言えなかった。
しかし「もっと日本語が話せるようになりたい。みなさんとコミュニケーションが取りたい」。
猛勉強の末に、今では微妙なニュアンスや感情表現も難なくこなすまでになった。
昨年のミズノオープンよみうりクラシックで当時、プロとして最年少のツアー初優勝。
いまやジャパンゴルフツアーを代表する若手の一人となり、「韓国は僕の地元で、日本は僕が生きていく場所」と、言うほどだ。
だから任務を果たしたあとは、もちろん日本ツアーに舞い戻る。
「せめてものお礼に」と、報道陣のみなさん配った契約先タイトリストのボールには、こんな文字が刻印されていた。
「2011年にまた! 感謝をこめて―どんふぁん」。
大リーグの松阪大輔に似ていると評判になり、街で完全にその人と間違われ、サインを求められたことがある。
「違うと言っても聞いてくれないから、色紙に“ドンファン”と書いておきました」と、ユーモアたっぷりに話してみんなを笑わせたこともある。
いつもニコニコと人の良い笑顔を振りまき、関係者を和ませた。
みんなから愛された人柄に、彼の留守を寂しがる人は多い。
ゴルフ日本シリーズJTカップの表彰式は閉会セレモニーをかねており、今年1年の感謝の気持ちをこめて、出場全選手が参加するのがならわしだ。
その最後、選手会長・宮本勝昌は1年を締めくくる最後の挨拶に、ドンファンをそばに呼び寄せて「帰ってきたときは、温かく迎えてやってください」と、本人に変わって頭を下げた。
さらに、みんなで18番グリーンを引き上げる際に、選手の中から自然と声が上がった。
「ドンちゃんを、胴上げしよう!」。
並み居るトッププレーヤーの手で、秋晴れの空に高々と舞い上がって本人も感無量…!!
「たくさんの人と日本語でお喋りできたことが、何よりの思い出です」と、ドンファン。
そして、「いま以上に逞しくなって帰ってきます。それまで僕のこと、忘れないで待っていてください!」と、改めて頭を下げていた。