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2006年後度ジャパンゴルフツアー表彰式<2>
ドンファンは真顔で言った。
「松坂さんように、僕もいつかアメリカに行きます」と、こだわるのにはワケがある。
道行く人が、思わず振り返ることも多い“そっくりさん”。
松坂投手と完全に間違えられたまま、サインを求められたこともある。
そのころはまだ日本語がうまくなかったが、それでも必死で説明した。
「僕は駆け出しのプロゴルファーで、今年日本に来たばかり。完全に人違いです」。
そう言ったのに、聞いてくれなかった。
「いいからとにかく、サインして」とペンを持たされて困ってしまった。
まさか「松坂大輔」と書くわけにもいかない。
「しょうがないから“ドンファン”て書きました」と、言って笑った顔がますますそっくりだった。
「僕はまだ、松坂さんみたいに全然有名人じゃないけれど。これからもし優勝とかして有名になって『ゴルフ界の松坂大輔』とか呼ばれるようになったら、ますます頑張らないとって思うし、これからも松阪さんに似ていることをプラスにして頑張っていきたい」。
そう語っていたドンファンがルーキーイヤーの今年、12月4日に行われたジャパンゴルフツアー表彰式で、最優秀新人賞・島田トロフィを受賞した。
同賞は、ツアープレーヤーに転向して3年以内、またはツアー出場が通算30試合未満の選手を対象に優勝、賞金ランキング、平均ストロークの3部門のポイントにより選出されるが、今年史上最年少での初シード入りを果たした彼以上に活躍した新人は、他にいなかった。
「・・・3年の間には絶対に取れると思っていましたが、いきなり1年目に取れて嬉しい」と大喜びで、この晴れ舞台にご両親を招待したのだが、わざわざ母国・韓国から駆けつけてくださった父リー・クンチョルさんと母ボンジューさんとともに、いざ壇上に立つと照れくささで一杯になってしまった。
「なんか、変な気持ち・・・」とモジモジしていたら、ご両親の喜びのコメントを急に自分が通訳することになったから、ますます困ってしまった。
「ええ? 僕が言うんですか?!」と頬を染めつつ、「息子と一緒に、ここに立っていることが夢のようです。これからも息子をよろしくお願いします」と、初めは小声でクンチョルさんの言葉を訳していた。
しかし、自身の気持ちを述べるときは、「人生で、一度しかいただけない賞で、ほんとうに嬉しいです。これに恥じないよう、これからも一生懸命頑張って来年こそ優勝します!」と、ひときわ声を張り上げて堂々と話した。
将来的な目標は、米ツアーへの参戦。
「その前に、ぜひ日本で何勝かしたい」というドンファンが松坂投手の後を追い、世界舞台に立つ日も近い?!