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フジサンケイクラシック 2008
チャンピオン藤島豊和の素顔は
3つ上の谷原秀人は記念撮影の場に乗り込んできて後輩を祝福した。
練習日に藤島に付きっきりで特訓をしたそうで「もっとコンパクトに振れ」と言ったスイングのアドバイスがさっそく効いた
しかし、そのせいで自身の連覇を阻止されたかっこうに「教えなきゃ良かったよ」と冗談交じりにムクれていた谷原だったが人なつこい藤島に、なかば強引に肩を組まれて一緒に写真に収まると、面倒見の良い先輩は、最後は「しょうがないな」という笑みを浮かべて胴上げの輪に加わった。
大会3日目には賞金女王からも激励を受けた。
同じ熊本県出身で、今でも親交がある上田桃子選手が「良い週になるといいね」と、メールでメッセージを贈ってくれたという。
明るく素直な性格が、周囲の心を引きつける。
デビュー年にはキャップにも収まりがつかないほど、ド派手なアフロヘアでツアーに出場したこともある。
今回の優勝争いはさすがにそんな余裕はなかったが、ノってくればひょうきんなパフォーマンスでギャラリーを喜ばせる。
プレーオフを戦った先輩の岩田寛とは、翌日の心配がない日に朝までカラオケで盛り上がることもしばしばだ。
そんなお茶目な素顔を持つ一方で、人情派でもある。
初めての優勝インタビューで、グリーンサイドで見守っていた恩人を、わざわざかたわらに呼び寄せた。
それは、デビュー当時から契約を結ぶナイキのみなさん。
どんなに調子が悪いときも「大丈夫、焦らないで」と言って見守ってくれ、どんなクラブの無理な注文も、嫌な顔ひとつみせずに答えてくれた人たちだ。
「感謝してもしたりないんです」と大観衆とテレビカメラを前に、大粒の涙をこぼしながら、てらいもなく言う藤島に感極まって、特に大きな嗚咽の声を漏らしたのが、同社のクラブ制作スタッフの阿部貴史(たかし)さんだった。
藤島とは、大学3年時からの付き合いだ。
出会ってから8年あまり。「一緒に成長してきた」と語る阿部さんは、最後に藤島にぎゅうぅっと抱きしめられて、涙が止まらなくなってしまった。
今回のことで、改めて阿部さんが痛感したのは、藤島の「人間としての魅力」という。
昨年、初シード入りを果たした祝勝会でもそうだった。
阿部さんたちスタッフをわざわざ壇上に呼び寄せて、参加者に向かって言ったのだ。
「僕が日頃から本当にお世話になっている人たちなんです」。
「・・・そして、僕らの名前を一人一人読み上げて、紹介してくれたんです。そうやって、感謝の気持ちをいつも僕らに見せてくれるから。こちらも彼のためならという気持ちになる」と、すっかり泣き腫らした目をして阿部さんは言った。
孝行息子でもある。
昨年は、念願の初シード入りを果たしたにも関わらず、今季はこれまで目立った成績もなく「ごめんね」と謝る藤島に、「練習していれば必ずチャンスが来るよ」と励ましてくれた父・末則さん。
優勝副賞の外車「New Audi A4 Avant」は、「父にプレゼントしよう」と決めている。