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ダイドードリンコ静岡オープン 1999
第3ラウンドの17位から一挙に単独2位まで猛チャージをかけた杉本周作
「ボク、ときどきすごく怖くなること、あるんです」。
それは大会3日目。
杉本が、まだスタートしないうちに、
雨で第3ラウンドが一時中断したときのことだった。
同じ日、朝から第2ラウンドの残りホールを消化。
杉本は、第2ラウンドをノーボギーの66で回り、単独4位につけていた。
「プロになってからこれまで、うまく行きすぎてるんです」と杉本は言う。
近畿大学で数々のアマタイトルを取り、卒業後の1996年にプロテストにトップで一発合格。翌年の1997年には賞金ランク60位でシード入りを果す。
そして、昨年は同ランク47位で、2年連続シード権獲得。
「ボクにしては出来すぎだと思ってるんです。
あまり苦労もなくここまで来て、どん底がまだない。
なんかこの反動が、突如、ガ〜ンっときそうな気がして、すごく怖くなることがある」。
ロングヒッターではない。
球もよく曲がるほうだ。
乱れたショットを、とにかく絶妙のパッティングで拾いまくる。
パットで、スコアメイクをするタイプ。「ボクのゴルフは完璧に、パットで持ってるようなもんなんです」
杉本は、淡々と言う。
最終ラウンドも、とにかくパットを入れまくった。
後半の10番でピンまで15メートルをねじ込むと、11番で5メートル、13番4メートル、16番4メートル、17番4メートル、18番では1メートルをしっかり沈めるなど、トータルパット数24。バーディ数10個(2ボギー)。
64のベストスコアで通算10アンダー単独2位。
「なんでこんなに入ったのかわからない。それがわかったら、来週も同じことしますよ」(杉本)。
大会3日目には、こうも言った。
「プロになってから、スコアを作るのが、うまくなった。
多少調子が悪くても、器用に合わせられるようになったんです。
でも、いいスコアを出せば出すほど、それが崩れ去ったときの恐怖が大きくなるんです」。
決勝ラウンドで出した、誰もが感嘆の声をあげる10バーディという脅威の数字に、一番、おののいていたのはもしかしたら杉本本人だったかもしれない。
「これまでうまく行きすぎている」と杉本は言った。
だが、まだ、それを言うには早すぎる。
順風満帆を恐れるのなら、優勝してからでも遅くない。