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ANAオープンゴルフトーナメント 2011
小田龍一は「師匠と一緒に優勝争いがしたい」
「長いのも、入ってくれた」と、スタートの10番は、右の林から木の下を抜いて6メートルのバーディパットをねじ込んだ。
12番は右のラフから刻み、15番はフェアウェイからいずれも7メートルに乗せたのが決まってくれた。
「自信がないときは、いつもこれ」というクロスハンドグリップ。師匠には「やめろよ、普通に握れよ」と、よく注意をされるがこの日ばかりは、この握り方で助かった。
また6試合ぶりに持ち出した2ボールのパターが奏功した。
18番は、林から出しただけの3打目から50センチにつけたのが入って命拾いをした。
最終18番も、右から左へとラフを渡り歩いて、「やっとのパーを拾った」。
たとえ曲げても師匠のように、この日は最後まで強気で回れた。
ここ最近、テイクバックの捻転が足りず、スイングのリズムが速くなっていた。
「トップまで回さないうちに打っていた」。反省から「思い切って回して、思い切って振る」と、たちまち豪打がよみがえった。2002年から2年連続でドライビングディスタンス1位の飛距離も戻ってきた。
「とにかく近くまで打って、短いクラブで寄せる」。持ち味を生かしたゴルフも出来た。
ボギーなしの67で、今季序盤は予選落ち続きの不振からの脱出にも、弾みがつきそうな単独首位発進だ。
「師匠と一緒に上位で回りたい」と、顔を赤らめて小田が打ち明けた相手は、なんと9つも年下の後輩だ。「俺はやだね」と、こちらはせっかくの申し出を冷たく突っぱねたのは、この日は小田に1打差の2位タイにつけた池田勇太。
意気投合・・・というか、小田が池田に心酔したのは昨年の全英オープンだった。年齢問わず誰にでも面倒見が良い池田は、初めてのメジャー挑戦に右往左往する小田に何かと世話を焼いてくれたばかりか、自分の時間を割いてまで、何時間でも小田の練習に付き合ってくれた。
池田の前で、これはと思うスイングで打ってみせる。「いいんじゃない?」と褒められれば、がぜん勇気がわいてくる。「僕はすごくマイナス思考なので」。いつでもどこでも我流を貫く池田のそばにいるだけで、気持ちだけでも強くなれそうな気がしてくる。
今では同じウェッジを使ったり、池田を真似してお揃いのティペグを使用したりと、とにかく池田に惚れ込んでいる。「本当は、歩き方も真似したいくらい。このまま一緒に優勝争い出来たら」と、ラブコールを送る。
「いやだね」と、頑として突っぱねた池田。「一緒に回ったら、気になって仕方ない!!」。確かに。9つも年上の小田のことが、池田にはいつも心配で仕方ない。そんな選手と連覇を狙う大事な試合で同じ組なんかで回ったら、集中出来ない。
「・・・そうだよね、俺のことが気になっちゃったら申し訳ない」と、口では言いながらも、小田の表情は期待に満ちて、決勝ラウンドなら昨年のマイナビABCチャンピオンシップ以来の直接対決にもその気満々だ。