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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2011
ドンファンが単独首位に
戦う男の本能で、ついピンに打って行きたい欲望を抑え、安全策に徹したご褒美が来たのは後半の12番。
やっぱりグリーンの真ん中を狙い、右奧のカラーを捉えた3打目。パターを握った10メートルは、「すごいフックライン」が、思いがけずカップに沈んだ。
そのあと13番は手堅く刻み、14番は3メートルのフックラインを決めて3連続バーディで、単独首位にのし上がった。
2年間の兵役をつとめあげ、戻ってきた日本ツアーはまさに浦島太郎状態だった。
母国・韓国のイキのいい若手選手がひしめき、24歳のドンファンも、いない間にもはや古株といってもいい存在になっていた。
そうして迎えた復帰1年目の今シーズンは「驕りがあったと思う」。ブランクもものともせず、「自分にも出来るはずだ、と。勘違いをしていたと思う」。たまに上位に来れば、気持ちが前につんのめる。「気合が入り過ぎていたと思う」。早く結果を出したいとの焦りから、せっかくのチャンスも自らつぶした。
先の2試合で、無残にも連続予選落ちを喫して先週まで3週間のオフは、傷心の里帰り。迎えてくれた家族や友人の反応はしかし、本人には意外なものだった。
「あんなに長いこと、試合を留守にしていたのにすごいじゃない?!」。
日本ツアーは8試合を終えて、500万円あまりを稼ぎ、賞金ランキングは56位という成績にも、みなが喜び讃えてくれたことで、かえって謙虚な思いが沸いた。
自らのデビュー当時を思い出したのだ。
18歳で来日したころは、「回りはすべて先輩で、ベテランの方々とラウンド出来ることが嬉しくて仕方なかった」。当時としては、史上最年少の19歳で初シード入りを果たしたときは、見るもの、聞くことすべてが新鮮だった。
プロの舞台でやれることの喜びのほうが大きくて、多少のミスも我慢が出来た。
「もういちど、あのころの気持ちを取り戻そう」と決めた。
若い選手たちの活躍も、その材料にした。
19歳の黄重坤(ハンジュンゴン)が、ツアー初優勝をあげた先のミズノオープンは、ドンファンが20歳と2ヶ月でやはりツアー初Vを飾った大会でもある。
「でも、黄(ハン)くんは日本に来たばかりで、しかも僕より早く優勝したから。僕よりもずっと上手い」と後輩を讃え、自分はいっそう初心に返る決意をした。
「残り2日もその気持ちを持ってやりたい」。
近々散髪する予定ではあるが今はまだ、金髪の頭を垂れて、頂点を狙う。