Tournament article
カシオワールドオープンゴルフトーナメント 2012
井上信(いのうえまこと)は「最後にアピールしたい」
今季は、2004年に優勝経験のある10月のマイナビABCチャンピオンシップが最後のトーナメントと思い込んでいた。「来年の開幕で、いかに良いスタートが切れるか」。
そのために、今は早くももっぱらトレーニングに時間を割いて、打ち込みは「街の練習場で、軽く打つ程度」。その日のうちに会場入りはしたけれど、「気持ちは正直、抜けちゃっていた」。
それが、ふたを開ければいきなりの好発進だ。
「練習しないほうが、真っ直ぐ行くのかな」。
この日は、グリーンもほとんど外さなかった自身の安定ぶりに、そんな風に言って笑った。
ツアー2勝の37歳が、シード落ちを喫したのは昨年。翌年のツアー出場優先順位を決めるファイナルQTも失敗して、どん底まで落ちて心に決めた。
「今年は我慢の1年。チャレンジトーナメントで頑張って、来年の出場権を確保しよう」。
幸い、不振の要因は分かっていた。
もともと痛かった左手親指付け根の症状が悪化したことと、スイング面の不調は「球が捕まり過ぎること」。
この2つを改善出来れば「シード選手として、必ず復活出来る」とのひそかな自負を、見事に形に出来た1年だった。今季はチャレンジトーナメントで賞金ランキング7位につけて、上位9人に与えられる来季ツアーは前半戦の出場権を獲得出来た。
ひとまず来年のめどをつけられたと、ほっとした矢先に思いがけず得た、今季のラストチャンス。
「ここでなんとか、なんて思っていない。去年、自分も味わいましたけれど、今週は熱い戦い」。
シード権をかけた選手たちにとってはこれが今季の最終戦。
もしかしたら、優勝争いよりもシビアな空気は、イヤというほど知っている。
レギュラーツアーの賞金ランクでは、114位。
来季のシード権が与えられる上位70人には程遠い井上も、そこに割ってやろうとは思わないでも、「僕にとっても最後の試合。せめて存在感をアピールして来年の開幕につながるゴルフがしたい」と、謙虚に上を見る。