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TOSHIN GOLF TOURNAMENT IN Central 2014
I・H・ホがツアー最多アンダー記録で初優勝【インタビュー動画】
通算28アンダーは、史上最多アンダーをさらに2つも伸ばす大記録だが、本人は納得がいかないようだ。
「今日は30アンダーを出すつもりだった」と、そこまで到達していれば、世界記録の更新まであとわずかに3つだった。
この日は、日本ツアーでの自身の初優勝もかかっていたが、「それは正直、どうでも良かった」。夢は、いくつ勝ったとか、賞金王とか米ツアーへの挑戦とか、そのどれでもなくて、「ゴルフ界のありとあらゆる記録を全部、塗り替えること」という。
母国韓国にも、コースレコードを残したゴルフ場が8つもあるという。まさに大会テーマにもぴったりの選手が、新記録への挑戦!
最終日も身上のドライバーで、どこでもかしこも攻めに攻めたが、「今日はパットとアイアンショットがうまくいかなかった」と、2打目以降が足かせに。8番と11番で2つのボギーに加えて、「今日は13番も14番も15番も16番も・・・ぜ〜んぶ惜しかった!」とせっかく優勝しても悔しがってばかりだ。
「真っ直ぐ遠くに飛ばす自信はあるのに」という豪快なドライバーは、一時期は47インチのシャフトを装着していたが「長すぎるとやっぱり、球が散らばる」と、今季は飛距離の中にも安定感を求めて46.25インチに調整してその分総重量を軽くするなどして「ヘッドスピードを速く、飛ばす練習」。工夫と試行錯誤を凝らしたこだわりのティショットはこの日は、左右にOBゾーンが見える6番でも迷わずドライバーを握って、350ヤードを記録するなど見所たっぷり。「まっすぐ遠くに飛ばせた」とご満悦で、きっちり沈めた手前3メートルのバーディパット。
555ヤードの最終ホールも豪快に、右の山越えのショートカットで、ラフから残り200ヤードの打ち下ろしの2打目も、8番アイアンで楽々グリーンの奥まで持ってきた。「18番は、イーグルを狙い」と、3打目のアプローチも入りかけ。最後の最後まで、ひたすら記録にこだわるゴルフは「その結果、気が付いたら初優勝をしてました」と、けろりと言った。
選手の間でまことしやかに流れる噂。ついに主催者の耳にまで届いてしまった。「ホ選手は、ゴルフは趣味で、本業はカーレーサーらしいです」と、表彰式でトーシンの石田信文代・表取締役社長に言われて赤面するやら青くなるやら。
確かに、この日の最終日もスタートのギリギリまで仲間との世間話やなんやらで、打撃練習を始めたのは、なんと前の組が1番のティショットを打ち終わってから。わずか10分前に、慌ててカゴを提げてレンジに行って、ドライバーでせいぜい2、3発を打ってバタバタと、キッズエスコートで和やかに子どもたちと入場してきた。
ラウンド中は、コースの形状や距離を記したヤーデージブックも持たず、素振りもろくにせず、ラインもほとんど読まずにサッと構えて、パッと打つ。
そんな普段の練習態度や極度の早打ちが、仲間内で「真剣にやってない」とか「遊んでいる」などとからかわれるようになり、ついに「ゴルフは趣味」と、そんな風に言われるようになったが心外だ。
確かに、2年前までカーレースのプロライセンスを持っていたが、父親の断固反対にあって今は自粛している。
大金持ちとの噂。確かに、現役時代の父は貿易会社の社長をつとめており、マセラッティにランボルギーニ、ロールスロイスと息子の華麗な愛車遍歴も「今は父も引退して、お金ないです」と、苦笑いで首を振る。
特にプロゴルファーには、その道のおたくが多いがIHも例外なく今でもやっぱり車が好きだし、カーレースの世界にも、未練はたっぷりだが「今はゴルフが仕事」と、本人はいたって真面目に取り組んでいるつもり。
個性的な帽子からのぞく金色の髪に、特注のサングラスはアルマーニ。いつも、個性的なゴルフウェアで180センチの長身を包んで颯爽と、6月の日本プロでは最終ホールで5発の池ポチャも、「僕にも何がなんだか」と苦笑いで、さして気に病む素振りもなく上がってきた。
母国韓国ではその超越ぶりに、天才と呼ばれた異端児が、規格外のゴルフで参戦6年目の日本ツアーに新風を起こした。
「みんなよく、米ツアーで優勝した人を成功者とか言うけれど。僕はそうは思わない」ときっぱりと、「大事なのはこれからも、自分が今いるこの場所で、全力を尽くすこと」。最後は大まじめに、当分日本を離れる気もないようだ。